心に染み入る言葉
目を瞠(みは)る言葉がある。並べられた言葉の遥か彼方から、書き手が見つけた真珠のような何かが、迫力を持って私の目前に立ち現われる。そんな詩句が紹介されていたので、皆さんにも、おすそ分けしよう。
タイトルは「本よむ人の歌」。筆頭に掲げられたのは永瀬清子の「諸国の天女(『永瀬清子詩集』)」。
諸国の天女は漁夫や猟人を夫として
いつも忘れ得ず思ってゐる、
底なき天を翔けた日を
きづなは地にあこがれは空に
続いては長谷川四郎の「本よむ人の歌」(『鶴 (講談社文芸文庫)』)。
風にページをめくらせ
海をみている
本よむ人
鼠にページかじらせて
夢をみている
本よむ人
そして、生田長江。(初出は不明。太宰のエッセイ「もの思ふ葦」に引用されている)
ひややかにみづをたたへて
かくあればひとはしらじな
ひをふきしやまのあととも
まぼろしは逃げる
まことは苦い
どうです? 好いでしょう。たまには心安らかに詩を諳(そら)んじてはいかが?