都内の国道沿いからモルタルの貧乏アパートが減ったのだって、貧乏人が減ったからではなく、彼らがその場所を追出されたからに過ぎないのだと私は思っている。
それに、なによりも、我々の経済システムは、神の見えざる足によって不断に踏みつけにされている人々――つまり貧乏人――を常に必要としているのだ。
そう、貧乏人がいなければ、金持ちは存在し得ない。このことはぜひ強調しておきたい。考えてみれば当然の話だが、富の源泉は、富にでなく、貧困にあるのだ。
うかつに考える人々にとって、富は、生産力の増大によってもたらされるものであるように見えがちだ。しかし、全地球的な視野に立ってみれば、資源が有限である限りにおいて、富は、富の偏在によってしか保障されないのである。
無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ