・『史上最大の株価急騰がやってくる!』増田俊男
・『空前の内需拡大バブルが始まる』増田俊男
・『敗者の論理 勝者の法則』増田俊男
・『日本経済大好況目前!』増田俊男
・『日本大復活! アメリカを救う国家戦略が黄金の時代の扉をひらく』増田俊男
・『大相場、目前!! これから株神話が始まる!』増田俊男
これは勉強になった。「なぜ、ドルが世界の基軸通貨なのか」が、やっとわかったよ。イラクで戦争をしてまでアメリカが何を守ろうとしたのかも。ジョン・コールマンと長谷川慶太郎を足して2で割ったような印象あり。アメリカの世界戦略、日本の役割、中国の現状と未来について論及している。増田氏の著作は、その殆どがデタラメなタイトルになっているので要注意。
資本主義が続く限り、市場は拡大し続ける。そして、市場が拡大する余地があるところには、必ずアメリカのドル支配の手が及ぶことになる。
日本や韓国は、戦後、アメリカに工業製品を輸出することで経済成長を遂げた。アメリカが民主化した国は、必ずアメリカに対する輸出国となる。アメリカは物を買った対価はドルで支払うから、アメリカとの貿易が盛んになればなるほど、ドルの市場は拡大していくことになる。
アメリカに輸出した物の対価として得たドルが余剰となると、そのドルで米国債を買う。これでアメリカは、米国債が買われた分だけドル紙幣を刷ることができる。米国債の買い手がいる限り、アメリカは世界中からいくらでも物を輸入することができる。
さらに、日本をはじめとするアメリカに対する輸出国は、ドル安になると自国からの輸出が減ると同時に、手持ちのドル債権が目減りするから、ドルを買い支えなければならない。強いドルを維持しているのは、アメリカへの輸出国なのである。
アメリカが消費で浪費した分を支払うのは、すべてアメリカに従属し、ドル市場に組み込まれた国々なのである。
武装勢力が破壊活動を行えば行うほど、アメリカのイラク支配の戦略は大成功である。
というのも、世界銀行が拠出するイラクの復興予算の采配は、アメリカが握っているからである。
武装勢力がイラク各地で自爆テロや自動車爆弾による破壊活動を行い、石油関連施設や公共施設、住宅や生活インフラが破壊されれば、それだけ復興に必要な予算もふくれあがる。アメリカ政府が費用を負担するのはもちろんだが、ほかの国連加盟国の復興支援も増加することになる。
イラク復興のために日本は50億ドルの支援を決定した。世界中から集められる資金の総額は、最終的に500〜550億ドルにのぼると予想されている。
アメリカもアフガニスタンやイラクの復興予算として870億ドルを計上したが、アメリカは自国の予算に加えて各国からの復興予算も思うままに使える立場なのである。
道路や電気、水道などの生活インフラを再建する予算をアメリカのゼネコンに割り当てることも、破壊された油田の復興や新たな油田開発の予算をアメリカの石油会社に割り当てることも、すべてアメリカの思うままなのだから、武装勢力が壊してくれるならこれほど都合のいいことはない。
アメリカの狙いは、イラクの石油を支配することだけではなく、イラクをドル市場とし、そこから生まれる経済活動の利益を吸い上げることにある。そしてイラクを足場に、サウジアラビアをはじめ、中東全域にドルの市場を拡大することである。
では、なぜアメリカは、そこまでドルの市場拡大にこだわるのだろうか――。
それは、本章の冒頭で述べたように、世界から富を奪いつづけることがアメリカのマニフェスト・ディスティニー(明白な運命)だからである。
アメリカが成長・拡大を続けるためには、ドルの市場を拡大しつづけなければならない。ドルの市場拡大とは、ドルを必要とする国を増やすことであり、しかもそれらの国々が必要とするドルの総量を増やしていくことである。
世界の国々がアメリカの通過であるドルを必要とするのは、ドルが世界の基軸通貨だからである。基軸通貨というのは、貿易の決済に使われる通貨である。国際貿易を行うためには、世界のどの国もドルをもっていなければならない。
アメリカはドルの需要があるかぎり、ドル紙幣を発行しつづけることができる。そして、新たにドル紙幣を発行した分だけ、世界から新たに物を買うことができる。
アメリカの貿易赤字額が増えつづけているのは、それだけ多くの物をアメリカが世界から買っているからである。
イラクのフセイン元大統領は、2000年11月、石油の決済通貨をドルからユーロに変更すると宣言し、アメリカに強烈な一撃を与えた。フセイン元大統領が石油の決済通貨をユーロにすることを宣言すると、北朝鮮、イランもこれに続いた。
さらに、サウジアラビアなどのOPEC加盟国から輸出される石油はすべてドルで決済されていたため、OPEC加盟国は石油貿易で受け取ったドルを外貨準備として蓄えていた。しかし、ドルの対ユーロ為替レートが下落しつづけていたので、ユーロで決済して外貨準備の一部をユーロにする国が増えたのである。
石油を世界中に供給している中東の産油国が、決済通貨をドルからユーロに切り替えると、ドルの需要が大幅に縮小することになる。
これは、ドル機軸通貨制度の危機であり、アメリカそのものの危機である。アメリカは、その端緒となったフセイン政権を見逃すわけにはいかなかった。このままユーロ圏が世界に拡大していくと、アメリカのドル優位性が失われることになってしまう。
フセイン大統領の決済通貨の変更はアメリカにとってショックだったが、アメリカの軍事力をもってすればイラクの政権を転覆するのは簡単なことである。実際、米英軍がイラク攻撃を開始したのは2003年3月19日のことだったが、4月9日には首都バグダットが陥落し、1ヶ月足らずでフセイン政権は崩壊した。
アメリカは、フセイン大統領のユーロ決済宣言から3年足らずのあいだに、ドルの危機をドル市場拡大にチャンスに変えてしまったのである。
共産党指導部にとって、経済成長は、国民を一つにまとめるうえで欠かせないものだったが、経済成長は同時に国民の不満を高め、民主化を求める反政府勢力の拡大を招くことになったのである。
中国の経済発展を牽引している北京オリンピックと上海万博が幕を引いたとき、中国経済は破綻を免れないだろう。2008年の北京オリンピックと、2010年の上海万博までのカウントダウンは、中国が台湾にミサイルを打ち込むときであり、日本におかれたアメリカの陸海空軍の司令部から、中国への攻撃が始まるときなのである。その混乱により、中国はもはや共産党のもとに一つにまとまっていることはできなくなるだろう。
アメリカは、中国経済のクラッシュと政治的な分裂の機に乗じて、各地の反政府勢力を掌握し、民主化を進め、親米政権を樹立することになる。
中国経済が、本当にスタートするのはそれからである。いまの中国は、中国崩壊のための中国である。
因みにこんなサイトもある――
本の内容は頗(すこぶ)るつきの面白さだが、著者の人相の悪さも一級品である。