古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

「Catch The Wave」Def Tech

 Def Techよ、やってくれたな! とハマりまくってる最中(笑)。こりゃあ名曲だ。映画『キャッチ ア ウェーブ』の主題歌。


 もうねプロモーションビデオを100回以上見たよ(笑)。普通はさ、一曲ヒットが出た後は、アップテンポのナンバーで目立とうとするもんなのよ。ところがどっこい、前作よりも抑制された曲で勝負に打って出た。彼等の音楽に対する真摯さと、自信が窺える。


 出だしのウクレレでノックアウト。中年は哀愁の旋律に弱いんだ。スパニッシュギター風でありながらも、微妙に中島美嘉の「雪の華」にも似ている。シャープ気味に弦が弾かれた瞬間、わたしゃ卒倒しそうになったね。


「My Way」にも書いた通り、彼等のリズムは波の音が基調なっているので、中高年の耳に優しい。この曲はところどころにシャープ気味(半音高い)の音が出てくるが、それがタイトルと見事にマッチしている。「波をつかまえろ、チャンスの女神には前髪しかないぜ」って感じ。「♪小鳥とアコギ」の後の半拍置いたウクレレの音は、たまらないね。途切れそうになった若者の心が、再びつながる様まで描いてみせる。


 言葉のもつリズム感が非常に強調されていて、「Catch The Wave」「合致して」などと韻を踏まれると、「悩んで」が「night and day」に聞こえ、「寝ても覚めても悩んでいる」という意味合いに受け止めてしまう。

 Catch The Wave
 感じて
 その手を合わせて
 合致して
 負けないで
 みんなだって悩んで


 何てこたあない言葉なんだが、私が感じるのは――

 波をつかまえろ
 自然の摂理に生かされていることを感じろ
 感謝の心をもって大宇宙のリズムと一体化せよ
 欲望に負けるな
 悩み苦しむのが人生だ
 誰もが同じだ
 だからこそ、もがきながら波と一体になれ


 という深遠な哲学性である。それを20代の言葉に翻訳したところに彼等の魅力がある。「波をつかまえる」のに、立場や年齢は関係ない。大自然と対峙した時、人間は丸裸にされる。有名や財産も通用しない。時に悩み、社会の荒波に揉まれ、挫折を繰り返しながらも、一人の人間として誠実に生きてゆこう。そんな呼びかけが、彼等の歌詞の基調になっている。


「so let's paddle away」からのコーラス部分が白眉。往年のビージーズやアース・ウィンド&ファイアーを思わせるほど。もう、世界で通用する域に達したといっていいだろう。

 アルバムを試聴すると、CMにも起用された「Get Real」などのヘビーファンクや、囁くように歌う「ありがとうの詩」(フジ系列「めざましテレビ」のテーマ曲)もあって、実に幅広い曲作りにチャレンジしている。しかも、そのいずれもが極めて完成度の高いものだ。


 そろそろ、SMAPあたりからもオファーが来るんじゃないか?


 その独創性と確かな音楽性は、サザンオールスターズMr.Childrenの後に連なるポジションを獲得すること間違いなし。