昨年の音楽シーンを席巻したボーカル・ユニット。2005年1月22日にインディーズからアルバムデビューを果たし、6月29日にはミニ・アルバム『Lokahi Lani』を発表。あれよあれよという間に、2枚のアルバムが270万枚のセールスを記録した(デビュー・アルバムがミリオンセラーになったのはインディーズで初めてのこと)。
インディーズ(メジャーの反意語)とは広告がないことを意味する。ファースト・アルバム発売後のオリコンチャート入りは253位。その後、3月20日に1位まで登りつめた。FMでオンエアされ、じわりじわりと人気に火がつき、ヨコハマタイヤのテレビCMに起用され、一気にブレイク。
Def Tech(デフテック)は、中国生まれでハワイ育ちのShen(シェン)と、東京生まれのMicro(マイクロ)のコンビ。彼等は自分達の音楽を「ジャワイアン・レゲエ」と称している。ジャパン+ハワイ+ジャマイカってこと。Charの倅(せがれ/Jesse)が二人を引き合わせたらしい。名付け親でもあり、「Def Tech」とは、“テクニックをひけらかさない”と、「Def=超カッコイイ」とのスラングを掛け合わせたネーミング。
私はヨコハマタイヤのCMでこの曲は耳にしていたが、気にも留めなかった。しかし、紅白歌合戦を見て、異様に惹きつけられてしまった。録画した映像を軽く100回以上は見た(笑)。
ここ数年、視聴率が落ち込む紅白歌合戦に何とかテコ入れをしようと、みのもんたを司会に抜擢。更に周到な戦略を立て、初出場のDef Techを後半の23時台に持ってゆき、視聴者を最後まで引っ張る作戦に打って出た。若者の絶大なる支持はNHKをも動かす(笑)。
それにしても、「My Way」である。さほど好きな曲ではないんだ(笑)。そもそも、個人的に日本のヒップホップが、わたしゃ大嫌いなの。黒人の振り付けの物真似をする日本人を見ていると、何だか植民地にさせられているような気になるからだ。
Def Techを見て、まず感じるのは「何か異質なもの」。そもそも、日本人と白人の組み合わせが異質だ。しかも、日本人のMicroの方がダンステクニックが上。Shenは長身でありながら、首の長さと猫背が致命的。歌は二人とも上手い。Shenは日本人には出せない、しなやかさと伸びのある声。一方、Microは、抑制した分、ワビサビを感じさせる珍しい響きがある。デュオの場合、極端に違うタイプの組み合わせが多いが、彼等の声は妙にマッチしている。
次に、軽さも見逃すわけにいかない。風を思わせるフワリとした軽さだ。それでいて、歌詞はメッセージ性が強い。これは、ハワイの海(Shen)と、サーフィン(Micro)の影響だろう。平和を志向する主張も、母なる海から生まれたものに違いない。
紅白で見せた彼等のパフォーマンスは完璧なものだ。プロモーション・ビデオと比較すると一目瞭然だ。そして、ここで初めて気づくのは、“曲の強さ”である。PVは、バックにアコースティックギター一本しかない。紅白だって、リズムボックスが増えている程度。普通だったらこの手の音楽は、ベースやドラムなど、強烈なビートを利かせて誤魔化すもんだ(笑)。声だけで勝負するとは見上げた根性だ。
それにしても、Microはダンスが巧い。もうね、目が離せないって感じになるね。紅白の舞台では、金扇を手に士気を鼓舞してみせた。私は何度も繰り返し見ている内に、彼の類い稀な運動神経に気づいた。金扇を後ろに放る際、フリスビーを投げるのと全く逆の動きをしているのだ。これは、やろうったって、できるもんじゃないよ。球技の得意な私でも無理だね。