シネマレビューは星の数ほどあるが、この「超映画批評」の右に出るサイトはそうあるまい。ペンを握るのは映画批評家の前田有一氏。プロであっても、制作側に媚びへつらう売文屋が多い中にあって、その真摯な文章から、爽やかな情熱が窺える。
私が参考にするサイトはこの他に、「みんなのシネマレビュー」があるが、ここは情報提供者が多いものの、野次馬的な無責任さが否めない。また、投稿されたレビューの著作権がサイト運営者に帰属するというアコギさに鼻白んでしまうのだ。
「超映画批評」は、「このサイトについて」を一読すればわかるように、「映画業界の活性化」を目指して、映画館に足を運ばせることを目的としている。つまり、より素晴らしい作品を援護射撃することによって、更にレベルの高い作品作りに貢献しようとしているのだ。これは、見上げた根性と言わざるを得ない。
一般にプロというのは、ある専門分野において、それでメシを食っている人物を指す。それ故、プロが立ち上げているサイトの大半は、マーケティングや商品の販売促進を目的としている。文筆業であれば、“書いてなんぼ”の世界であるから、金にならない文章は書かないのが普通なのだ。
それを惜し気もなく書いているというのは、やはり、前田氏が「正真正銘の映画大好き小僧」であるからだろう。私が前田氏の人物を信用できると踏んだのは、この一点に尽きる。
作品はいずれも点数で評価されていて、文章だけではわかりにくい部分も一目瞭然だ。素人の私なんぞでも感じることだが、評価は低いものの、文章が上手く書けてしまう場合が少なからずあるものだ。
私が最近、映画館で見た作品で一等、気に入っているのは『HERO/英雄』であるが、この作品のラストシーンにおける前田氏の評価は私が受けた印象と完全に一致している。
趣味・嗜好の世界であるから、当然、私が受けた印象と異なる場合も多い。だが、それすらも「こういう見方があるのか」と参考になる。また、前田氏には申しわけないが、映画を見ることがなかったとしても、テキストだけでも楽しめる筆力が確かにある。
更に一見、斬り捨てるような文章にも、どこかしら温もりを感じさせるのは、映画そのものに対する愛情の為せる業(わざ)なのだろう。