『オールド・ボーイ』パク・チャヌク監督

 ・『オールド・ボーイパク・チャヌク監督

『LUCY/ルーシー』リュック・ベッソン監督、脚本


・監督:パク・チャヌク
・主演:チェ・ミンシク


 初雪の降る中、新宿まで『オールド・ボーイ』を観に行った。前田有一氏のレビューで興味を覚えた直後、井筒監督がテレビで絶賛していたため。


 ウーーーン、微妙(笑)。フィルムが回っている間の迫力が、席を立った途端、どこかへ行ってしまっている。チグハグな印象が否めない。多分、結末から構成されたからだと想像する。


 チェ・ミンシクの変貌振りは、『レイジング・ブル』のデ・ニーロを思わせるほど。復讐に駆り立てられた男の情念が、顔の陰影で見事に表現されていた。更に見逃せないのは、音楽が実にいいこと。ワルツが奏でる3拍子は、三者で踊る愛憎劇。大どんでん返しのストーリーも、よく練られている。「役に立つのか?」――「立った」「立たなかった」という台詞もチャンドラーのように秀逸。


 この作品を面白く感じないのは多分、私の性格に起因している。私は気が短いので、素早い果断を信条としている。


 チャンスはいくつもあったはずだ。主人公は、最初に敵と出会った場面で、相手を殺すべきだった。また、彼女へのプレゼントを開けないよう電話で指示した後にも、その好機があったはずだ。自分が監禁された理由なんぞは、どうでもいい。やるべきことを速やかにやってのけてこそ、後悔とは無縁の人生を歩めるのだから。そうであれば、自分を監禁していた人物を拷問した後も、きっちり始末しておくべきなのだ。


 チェ・ミンシクの演技は素晴らしいのだが、立ち回りシーンでの力不足は誤魔化しようがない。大体、あの腕の振り方は何なんだ? 頭の後ろで拳を振りかざす様は、まるで子供の喧嘩だ。そもそも、あれだけの人数を相手にして勝てるはずがないのだ。


 そして、敵方の罠を支えていたのが催眠術だとわかった途端、「何でもありかよ?」という疑念を払拭できなくなる。人が何人死んでも、警察が出てこないのもリアリティに欠け過ぎ。


 この映画は、儒教の国でタブーに挑戦したエンタテイメントである。韓国人であれば相当、ショックを受けるに違いない。日本でいえば、『極道の妻たち』と同じ世界で、動物的な本能に衝き動かされた生きざまが、観客の灰色でチマチマした生活を炙(あぶ)り出している。点数は低いが、今まで見た韓国映画の中では、文句なくナンバーワンだ。