古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『24 TWENTY FOUR』&『シーズンII』

・監督:スティーヴン・ホプキンス&ジョン・カサー 【10点】
・脚本:ロバート・コクラン&ジョエル・サーノウ


 話題となっている『24 TWENTY FOUR』と『シーズンII』を見た。どれぐらい話題になっているかというと、この間、北海道へ帰省した際、決して映画好きとはいえない私の父を始め、親戚一同が見ているほどである。全米で大ヒットしたテレビ番組。


 共に全24話となっており、DVDもビデオも全12巻。因みに私は『シーズンII』のvol.8までしか見てない。vol.7〜8が4月29日にレンタル開始されたが、今日、やっと見つけてきた。近所のレンタルビデオ店を駆けずり回ってこのザマである。


『シーズンI』は、アメリカ初の黒人大統領が選出されようとしたその時に、大統領候補の暗殺計画が発覚。テロ対策ユニットのジャック・バウアーの長い一日が始まる。ご存じの方も多いと思うが、“リアルタイム”を売りにしており、一日をきっかり24時間かけてドラマ化している。合間合間に挿入される時刻と、心臓の鼓動を思わせる効果音が、否応(いやおう)なく緊張感を強いる。


『シーズンII』は、中東のテロリストがアメリカ国内に核爆弾を持ち込む。既に引退したジャック・パウアーが大統領からの依頼によって、再び現場に復帰する。


 噂に違わぬ面白さ。手に汗握るとはこのことだ。DVDプレーヤーをお持ちの方は購入した方がいい。


 実はミステリ愛好家にとっては、さほど珍しい筋運びではない。所謂(いわゆる)、モジュラー型警察小説と同じスタイルで、様々な事件が同時多発で進行する。ロバート・ラドラムや、デイヴィッド・マレル、フレデリック・フォーサイスの系譜といえばわかりやすいだろう。私が最も好むジャンルである。


 このテレビ番組の成功を考えてみた。まず、スピーディな展開が挙げられる。いずれのシーンも、短篇小説のような完成度の高さである。それが次々と場面展開してゆくのだから面白くないはずがない。第一に挙げられるのは脚本の完成度の高さといっていい。


 次にキャスティングの素晴らしさだ。取り立てて美男美女が現れるわけではない。それが逆にリアリティを生んでいる。更にそれぞれの配役が完璧な定型化に成功しているのだ。これは『シーズンII』を見て、ハッキリと認識できた。『シーズンI』では、ジャック・バウアーの妻子に終始、イライラさせられたが、これすらも同様なのだ。家族思いの愚かな役どころとなっている。これが『シーズンII』になると、マリーの姉がその役を担う。しかしながら、単純な定型化ではなく、例えば、バウアーを始め、駄目上司やテロリストまでもが、“父親の顔”をしっかりと示すシーンもある。


 これまで様々な映画化されたミステリ作品を見てきたが、いずれもしっくりとこなかった。要は、2時間という制約がある中で、どうしてもストーリーを端折っている印象が拭えなかった。この作品はその制約を打破し、ミステリ小説そのものが持つ緊迫感を見事なまでに表現している。


 陰謀に次ぐ陰謀、裏切りに次ぐ裏切り……。迫真の構成が終盤まで途切れることはない。どの巻をとってみてもストーリーがダレることは無かった。


 私が今までで最も好きなアクション映画は『狼 男たちの挽歌・最終章』(ジョン・ウー監督、チョウ・ユンファ主演)だが、これに勝るとも劣らぬ作品だ。否、『狼』が一話完結であるとすれば、『24 TWENTY FOUR』は大河ドラマの趣がある。


 内藤陳であれば、「見ないで死ねるか!」と叫ぶことだろう。


 5月14日にvol.9とvol.10が、5月28日にはvol.11とvol.12がレンタル開始される。当然と予想するが、この日にレンタルすることは難事中の難事だろう。見終える日までに必要とされる忍耐力を想像すると、頭がおかしくなりそうなほどだ。


・『24 TWENTY FOUR シーズンIV