古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

養老孟司の政治的スタンス

『脳が語る科学 養老孟司対談集』養老孟司〈ようろう・たけし〉(青土社、1999年)。冒頭は中沢新一との対談。養老が「新しい歴史教科書をつくる会」からの誘いを断った旨を語っている。両者ともに「教科書なんぞどうでもいい」という考え方が共通している。戦後教育の罠を汲み取っていない時点で養老の政治的スタンスは「無責任なリベラル」と考えてよさそうだ。この人は実に頭がよくて、政治的な臭いを見事なまでに隠し通している。90年代後半で中沢と対談をするという行為にも驚かされる。オウム真理教の教義を補強した人物なのだから。同時に『脳が語る身体 養老孟司対談集』も刊行されているが、池田清彦などが目につく程度か。総じて共著作品を見ると左派系が多い。