古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

正しい多数決原理とは

 ・政治的受益者の地位に甘んじるな
 ・多党制と連立政権
 ・正しい多数決原理とは
 ・自信のない政治ほど強権を用いやすい

『歴史と私 史料と歩んだ歴史家の回想』伊藤隆

 多数決原理は、通常理解されるごとく、「多数と少数の関係」を規律する慣行であるというよりも、むしろ「多数と全体との関係」を調整補完する機能を有していると考えてよかろう。(中略)万人がなっとくできる正確な理論と根拠が今日存在しない以上、国民意思の最大公約数を発見するには、どうしても、多数と少数との交流が不可欠の条件となる。「議席の多数」と「国民の総意」との間に生まれる空白地帯を埋める働きこそ、正しい多数決原理の解釈に俟(ま)たねばならぬのである。


【『政治を考える指標』辻清明岩波新書、1960年)以下同】

 たとえ自党の多数派が、衆をたのんで強行しようする法案であろうとも、それが少数意思を無視する悪法ならば、これに盲従しないのみか、かえって野党議員とともに、これを葬り去るだけの知性と勇気を議員が備えていることを前提とした上で、はじめて多数決原理は成り立つのである。もしこのような前提を欠いた議会で、多数決原理を用いるならば、それは「多数の暴政」を招きやすいのみならず、代表の原理を正当化することすら困難となる。