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4人の救急医全員一斉辞職 激務や人員不足…捨て身の訴え

 鳥取大病院救命救急センター鳥取県米子市)の八木啓一教授(54)ら救急医4人全員が3月末、一斉に辞職する。激務による心身の疲労や人員不足、病院への不満などが理由。八木教授は「体力、気力が限界。辞めて訴えるしかなかった」としている。

鳥取大病院、今月末で


 センターは、生命の危険がある重症患者を24時間態勢で受け入れる三次救急医療機関
 八木教授と准教授、若手医師二人が所属する救急災害科は、2006年秋に医師二人が辞職して以降、負担が増加。若手医師は、地域の病院への応援を含め月約10回の当直が常態化していたという。
 04年から臨床研修先を自由に選べるようになった影響で、鳥取大病院は研修医が都市部に流出するなどして激減。研修後に救急災害科を希望した医師は「一人だけ」(八木教授)だった。
 ほかの診療科からの応援医師3人と計7人で当直を回していたが、若手医師二人が昨年夏「ここにいたら忙殺される。外で腕を磨きたい」と辞職を申し出て、八木教授と准教授も辞意を固めた。
 八木教授によると、ほかの科には応援医師を出すことに不満もあり「大学病院に救急なんかいらない、おまえたちは大学のがんだ」と言われたこともあったという。「病院は休日や時間外のお守(も)りが必要なだけで、救急の専門家を求めていると思えない」と八木教授。
 豊島良太病院長は「覚悟の辞職と感じた。病院全体としての協力態勢が整わなかったことが一番の原因」としている。日本救急医学会評議員も務める坂本哲也帝京大教授は「国立大病院は医師育成と高度専門医療が中心。一部の大学を除き、救急を軽視するようなところがある」と指摘する。
 病院は後任の教授を確保したが准教授は未定。ほかの科の医師を救急災害科に所属変更するなどし、4月以降の患者受け入れに支障はないとしている。
 母校の鳥取大で後進を育てるのが夢だったという八木教授は「鳥取を見捨てるようで、地元の人に非常に申し訳ない」と複雑な心境を明かした。

相次ぐ集団退職 地域医療に支障も


 市民の命と健康を守る病院から、集団で医師が退職するケースが後を絶たない。背景には昼夜を問わない激務による疲労や、待遇への不満があるとみられるが、結果的に患者がしわ寄せを食う形になる場合もあり、地域医療への支障が懸念されている。
 成田空港に最も近い総合病院で、年間3万人超の救急患者を診療する成田赤十字病院(千葉県成田市)では12日、常勤内科医34人のうち11人が3月末での退職を申し出ていることが判明。病院は「過酷な勤務状況が理由」としている。
 同病院は新型インフルエンザ発生時には感染が疑われる人を受け入れる施設にも指定されているが、病院関係者は「この状態で対応は極めて難しい」と話す。
 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)では昨年3月末、10人いた常勤麻酔科医のうち5人が退職。待遇が良い病院への転籍が主な退職理由というが、手術件数が減るなどの影響が出た。
 北見赤十字病院(北海道北見市)は昨年3月に内科医が大量退職し、約2カ月にわたり内科外来を休止。国立循環器病センター(大阪府吹田市)でも2007年、集中治療室の専属医師が「より幅広い診療をしたい」などと集団で退職を申し出た。


東京新聞 2009-03-29