北海道音更(おとふけ)町農協の男性職員(当時33歳)が自殺したのは、過酷な労働などが原因として、遺族が同農協に計1億4058万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、釧路地裁帯広支部であった。
岡山忠広裁判長は「業務により心理的負荷が生じてうつ病になり、自殺した」として、同農協に慰謝料(3000万円)や逸失利益など計1億398万円の賠償を命じた。
判決によると、男性は農産物の出荷を担当する青果課に勤務していたが、2004年6月からは職場の欠員で業務量が増加し、同年8月には超過勤務時間が約90時間にも達した。さらに、夜の会合も増え、仕事上のトラブルで上司に叱責(しっせき)されたことなども重なり、05年5月に同農協の倉庫で自殺した。
帯広労働基準監督署は06年12月、自殺は業務に起因するものとして労災を認定。同農協が遺族側の損害賠償請求に応じなかったため、提訴していた。
農協側はこれまで、「男性に過重労働を強いていない。男性のうつ病は予見できず、自殺の原因は仕事ではなく個人的な問題によるもの」と主張。判決では、「自殺前の男性の仕事ぶりや言動を注意深く観察していれば、十分把握できたはずで、業務量の軽減など取るべき措置を怠った」と退け、安全配慮義務違反と認定し、遺族側の主張を全面的に認めた。
【読売新聞 2009-02-03】