トーマス・ブラス


 1冊読了。


 17冊目『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス(誠信書房、2008年)/野島久男、藍澤美紀訳。タイトルに偽りあり。服従実験の詳細は記されているが、特にそれだけを詳述した作品ではない。ミルグラムの評伝である。その意味では、ロバート・カニーゲル著『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』(工作舎、1994年)と似ていて、飽くまでも「網羅」に力点が置かれている。読み物としてはこっちの方が辛い。才豊かにして、才に溺れた印象を受けるが、ミルグラムはその知名度に似合わず不遇であった。服従実験以外にも、スモールワールド(六次の隔たり)という概念を構築したが、どこか胡散臭い評価をされていたようだ。社会心理学を確かな学問にした最大の功績者であるにもかかわらず。面白主義といった部分で多分、南伸坊に似ていたのではと勝手に想像している。