古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『敗者の論理 勝者の法則』増田俊男

『史上最大の株価急騰がやってくる!』増田俊男
『空前の内需拡大バブルが始まる』増田俊男

 ・『敗者の論理 勝者の法則』増田俊男

『日本経済大好況目前!』増田俊男
『日本大復活! アメリカを救う国家戦略が黄金の時代の扉をひらく』増田俊男
『大相場、目前!! これから株神話が始まる!』増田俊男

 成果主義では単年度の結果で賃金を決めるから、2年がかり、3年がかりの研究開発プロジェクトや大口顧客の獲得戦略などが立てにくくなる。
 その結果、富士通ではヒット商品が出ないばかりでなく、製品の品質が落ちるという決定的な問題が発生するようになった。社員の労働力が低下し、製品に対する顧客からの苦情や不満が倍増した。自社の製品に自信を失った営業部門は、売上げを維持するために、自社製品を他者のソフトウエアとパッケージ化して売るようになったという。
 かつて「ワープロといえば富士通のオアシス」といわれた、日本のトップ企業の姿からは想像もできないことである。
 また、成果主義は基本的に半年か単年度評価であるため、単年度では成果が出ないが、数年後には絶対に必要になるような仕事は誰もやらなくなり、目先の数字だけを追う社員ばかりになってしまった。
 年功序列型の終身雇用の時代には新入社員の教育・育成は、先輩社員の当然の義務と考えられていたが、成果主義が導入されてからは、誰も新人の世話をしたがらなくなったという。
 会社とは一定の目的をもって集団で動くものである。新人を育てる努力をしなければ、社内の先輩・後輩関係も育たなくなり、結局は部門の成績や会社全体としての業績にもマイナスとなってしまう。
 1993年になって、富士通のほか、オリンパスをはじめ大手企業が次々に成果主義を導入したが、この背景には当時、経団連成果主義の徹底を促したことがあった。これにより、各社が慌てて成果主義を導入することになったのである。
 しかし、その数年後には、成果主義を取り入れた結果、マイナス面ばかり目立つ企業が増えることになり、ほとんどの企業で見直しが行われることになった。

 三角合併とは、株券の交換による買収である。
 これまで日本企業と外国企業の株式交換による合併は、1999年に改正された商法により禁止されていたが、小泉内閣アメリカ企業が株式を発行するだけで日本企業を買収できるようにお膳立てしようとしているのである。
 外資による「三角合併」が解禁されれば、アメリカ企業はアメリカで発行される株式と日本企業の株式を交換することによって日本企業を買収できるようになる。
 日本とアメリカの主要企業の株式時価総額には大きな開きがある。薬品大手の武田薬品が約4.4兆年であるのに対し、ファイザー製薬は約20兆年、日立製作所の約2.2兆円に大使てゼネラル・エレクトリックは約39兆円である。ニューヨーク・ダウ平均10500ドル(2005年6月現在)に対し、ニッケイ225は10300円(同)。アメリカの株式交換による日本企業買収がいかに有利かがわかる。なんと100対1の有利さである。
 アメリカ企業が株式交換によって日本企業を買収することがいとも簡単なことがわかる。
 そうなれば、日本の優良企業は根こそぎアメリカ資本に支配されてしまうことになりかねない。

「コストカッター」と異名をとるゴーン氏だけに、その内容は非常に厳しいものとなった。
 まず、2001年3月に村山工場(東京都武蔵村山市)、関連会社の日産車体の京都工場(京都府宇治市)、愛知機会港工場(愛知県名古屋市)を閉鎖し、その1年後には久里浜工場(神奈川県横須賀市)と九州エンジン工場(福岡県苅田町)も閉鎖した。
 また、従業員14万8000人のうち、その14%にあたる2万1000人の人員整理を行った。
 この一連のリストラによって、2001年3月期の連結決算は、最終利益が過去最高の3310億7500万円となり、3期続いた赤字から脱却することとなった。
 しかし、ゴーン氏のドラスティックなリストラは、大きな犠牲を伴うものだった。
 日産自動車に限らず、日本の大手メーカーの工場は、地域社会と密接な関係にある。ゴーン氏が行ったリストラは、結果として日産自動車の従業員だけでなく、工場周辺に集まる下請け部品工場や飲食店などで働く地域社会をまるごと破壊したのである。これは、単に人々が働き口を失ったというだけではない。
 日産の下請けや関連会社、工場周辺の人間関係で結びついた「日産ファン」という顧客をも破壊してしまうことになったのである。
 利益率は上がっていても、2001年には国内販売台数が前年比3.6%減少し、その後も国内の販売台数が伸び悩んでいる原因の一つはここにある。

 アメリカでは、人も物と同じように市場で売り買いされる。需要が旺盛なときは賃金が上がるし、景気が低迷して雇用が過剰になれば賃金は下がってくる。さらに、雇用が維持できなくなると、企業は人員削減を余儀なくされ、失業者が増えてくる。
 アメリカは、自由と民主主義を建国以来の理想と掲げているが、それは理想を掲げないと国を一つにまとめていけないという厳しい現実があるからである。
 アメリカには、ほんの130年あまり前まで奴隷制度があった。国家が奴隷制をやめたら、KKK団という人種差別団体まで生まれた。
 このような国では、法律で人権を守らないことにはどんなことが起こるかわからない。アメリカが訴訟社会なのは、理想と現実とが乖離していることを示す証拠でもある。
 かつて奴隷制が存在し、そうした取引が実践されてきたという歴史的背景があるから、雇用関係も奴隷制がかたちを変えたものになる。今日でも、基本的にマーケットで売買される感覚は受け継がれている。売るほうも買うほうも、より多く儲けるという目的に徹している。

 アメリカでは、転職を繰り返すことがポジティブに受けとられることが多い。転職を20回した人がいるとする。日本人は、「会社を20回辞めた人」とみる。しかしアメリカ人は、「会社に20回採用された人」とみる。アメリカでは、20回も転職している人は20回ランクが上がって給料も高くなっているはずだから優秀な人ということになる。