「時事評論家」の増田俊男氏が、パラオ共和国に設立した銀行で集めた約16億円が返済困難に陥った問題で、増田氏が出資を募った約20件に上る海外投資案件の送金先が、タックスヘイブン(租税回避地)であるカリブ海の島とハワイに登記された二つの企業の口座だったことが分かった。
この2社の代表は増田氏と知人女性で、投資家たちには資金の流れをほとんど公開していなかったため、投資家の代理人の弁護士は「送金先は、架空の会社の疑いが強く、実態が不透明」と指摘している。
増田氏と返金トラブルになっていた投資家2人は、パラオの銀行に預金を募る行為などが出資法違反(預かり金の禁止)に当たるとして24日、警視庁に告訴状を提出した。
関係者によると、増田氏や知人女性は、ベルギーのダイヤモンド加工会社や米・シリコンバレーのIT企業の未公開株などの出資も勧めていたが、会社が消滅するなどして計画が頓挫したため、最近は、ハワイのコーヒー園とカナダのハイテク企業への出資を熱心に推奨していたという。
しかし送金先に指定されるのは、いずれも投資先の企業ではなく、香港など海外にある二つの口座で、名義は、それぞれカリブ海の英領タークスカイコス諸島とハワイに登記された会社になっていた。
投資家には、この2社が発行した「株式保有証明書」などと記された証書が送られ、不審に思った投資家が指摘したところ、増田氏側は投資家は株主になっていないことを認めたという。投資家の代理人は「増田氏らの会社が消滅すれば、証書は紙くず同然になり、問題がある取引だ」と話している。出資金トラブルが明らかになった24日、増田氏のレギュラー番組(月〜金曜日)を放送していた「ラヂオもりおか」(盛岡市)は当面、番組を休止すると発表。今月26日に開催が予定されている増田氏の「目からウロコの会」と題した講演会で、ゲスト講演するとしていた評論家・竹村健一氏の事務所も「出席は取りやめる」とコメントした。
【読売新聞 2008-01-25】