・『星と嵐』ガストン・レビュファ
・『神々の山嶺』夢枕獏
・『狼は帰らず アルピニスト・森田勝の生と死』佐瀬稔
・『ビヨンド・リスク 世界のクライマー17人が語る冒険の思想』ニコラス・オコネル
・『そして謎は残った 伝説の登山家マロリー発見記』ヨッヘン・ヘムレブ、エリック・R・サイモンスン、ラリー・A・ジョンソン
・『ソロ 単独登攀者 山野井泰史』丸山直樹
・『凍(とう)』沢木耕太郎
・『アート・オブ・フリーダム 稀代のクライマー、ヴォイテク・クルティカの登攀と人生』ベルナデット・マクドナルド
タイトルは「リスクの向こう側」という意味か。既に引退した登山家も多いが、これっぽっちも老いを感じさせない。メラメラと燃え続ける何かがある。語られているのは「過去の物語」ではなく、まさに「思想」だ。
世界屈指のクライマーのインタビュー集。それぞれの人物の事跡も紹介されている。何気なく語られる言葉は、いずれも味わい深いものだ。
クライミングの真の技術とは生き延びることだ。それが最も難しくなるのは、従来行動の限度と考えられていたところまで到達してしまい、さらにもう一度踏み出そうとするときである。だれも行ったことのないところ、だれも行きたいと思わないところ――あるいは自分がしようとすることをだれも理解してくれなようなところへ乗り出すときである。そういった未知の領域では、感覚と経験は「踏みならされた」世界で得られるよりもはるかに強烈である。
【ラインホルト・メスナー『生還――八千メートル峰全十四座』】
良い岩壁の良いルートは芸術作品です。人生のようなものです。私たちは人生を送り、やがてその人生は消え失せますが、何かが残ります。残るのはルートです。
【ラインホルト・メスナー】
――隊長自ら手本を示したのですか。
ああ、率先して手本を見せるのがいいと信じている。結果を出したければ、口だけじゃなくて自らやらなければいけない。ガッシャブルム4峰では8日間、ポーターより重い荷物を背負って毎日何往復もした。私が率先してやったので、隊員たちも同じようにやらざるを得なかった。ポーターにも他の連中にも良いお手本を示したというわけだ。
【リカルド・カシン】
――楽しみましたか
楽しみましたよ。でも、7600メートルを越えるともう楽しんでなんかいられませんね。体力も元気も、低いところのようには保てないのです。3000〜4000メートルのアルプス登山のほうがずっと楽しい。ヨーロッパ・アルプスなら頂上に着いたら岩の上に寝ころがって昼寝することができますが、ヒマラヤではそんな話は聞いたことがない。すぐに下りてきてしまいます。長居しすぎたら下りてこられなくなることがわかっていますからね。
【エドマンド・ヒラリー卿】
それにヘリコプターで救助してもらうわけにもいきません。ヘリコプターは最高の条件下でも5800メートルまでしか飛べないからです。
【クルト・ディームベルガー】
――ゆっくりしたペースですか。
ええ、私はゆっくり歩きます。山岳ガイドの古い金言に、「ゆっくり行く者はしっかりと遠くまで行ける」というのがあります。とても古い諺で、子供のころに初めて聞きました。高所ではゆっくり行ったほうがいいと思います。私にはそれが向いている。
【クルト・ディームベルガー】
――ひとりで登るほうが好きでしたか。
冒険家には孤独は本質的な条件だ。いつもひとりでやったわけではないけれど、山にしても世界をまわるにしても、なるべくひとりで行くのを好んだね。孤独の価値は大きい。感受性を鋭くし、感情を増幅させるからだ。
【ヴァルテル・ボナッティ】