『僕の名前は。 アルピニスト野口健の青春』一志治夫


 一志治夫の作品は初めてだが、実に読みやすい文章だ。内容はというと、全く期待外れだった(笑)。それでも一読の価値あり。


 手のつけられない暴れん坊とか、何を考えているのかわからない軽度発達障害タイプのお子さんをお持ちの方には、強く薦めておこう。


 引っ越しや、両親の離婚などが少年の自我を引き裂く様が丁寧に描かれている。人間とはまことに厄介な動物である。「人間らしさ」をインストールしなければ、人間にはなれないのだ。アマラとカマラという姉弟は狼に育てられた結果、人間性を完全に喪失していた。弟のカマラは保護されて間もなく死亡したが、姉のカマラは涙一つこぼさなかったという。


 現在の野口氏からは想像できない悲惨な少年時代を過ごしている。途中経過で人間を評価することが、どれほど誤っているかを教えてくれる。紆余曲折を経たとしても、人は目標を見つけた途端、生き生きと輝き出すのだから不思議だ。



僕の名前は。―アルピニスト野口健の青春