最悪なのは、自分が見殺しにしていたことすら知らなかったという点だ。当時国連高等難民弁務官の地位についていたのは日本人外交官緒方貞子である。彼女は日本の国連外交のチャンピオンであり、国内の政治家や官僚の腐敗と無能とは一線を画した存在ではなかったのか? 100万人が死ぬあいだ彼女はなにもせず、殺害犯たちに「人道援助」をおくり、そのことを日本人は誰一人気にもとめていなかった。それはなにを意味するのだろう?(※訳者あとがき)
【『ジェノサイドの丘』フィリップ・ゴーレイヴィッチ/柳下毅一郎〈やなした・きいちろう〉訳(WAVE出版、2003年)】