ボクシング:内藤vs亀田大毅

亀田家“総口撃”に内藤タジタジ


 亀田ファミリーの“包囲網”に王者が完敗した。10日、都内で「WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦」(11日・有明コロシアム)の調印式が行われ、挑戦者・亀田大毅(18)=協栄=をはじめとする亀田一家が、王者・内藤大助(33)=宮田=に“総口撃”を仕掛けた。亀田家の強烈な集中砲火に内藤は防戦一方。大毅が「負けたら切腹」と公約したのに対し、“切腹”を拒否した内藤には、亀田家が「根性なし」の烙印(らくいん)を押した。計量では王者、挑戦者ともにリミットいっぱいの50.8キロで一発パスした。


 “総口撃”の先陣を切ったのは、長男・興毅だった。報道陣席の2列目に三男・和毅(ともき)と陣取った興毅は、会見中の内藤の言葉を遮るように横やりを入れた。


興毅「内藤クン、国民の期待に応えろよ。期待してるよ」
内藤「俺がしゃべってるんだよ。何言ってんの?」
興毅「国民の期待に応えろよ。(応えるって)言ってみろ!」


 畳みかけるような興毅の連射砲に、内藤は二の句が出ない。こうなれば亀田家の一方的なペースで、興毅の援護射撃を受けた二男・大毅は一気にヒートアップした。


大毅「俺は負けたら切腹するわ」
内藤「えっ、切腹するの。どうやって切腹するの?」
大毅「オマエが刀を持ってこいや。オマエは負けたら切腹するんか?」
内藤「俺はそんな約束は出来ないよ」
父・史郎氏「そんなんで成立するか! そんな話あるかいな」
大毅「思いが違うねん。俺はベルトを死ぬ気で奪いにいくわ。根性ゼロやな」
興毅「ほんま、根性ゼロやんけ」


 左隣からは大毅と史郎氏、そして前方から興毅の“口撃”を受けた内藤のダメージは深刻。王者がペースを握れないまま、ワンサイドの舌戦は終盤戦へと突入した。


 大毅「内藤の印象?顔がでかい。びっくりしてん。(内藤の)そのしゃべり方、なんとかならへんのか。吉本(興業)いけや。俺よりおもろいやんけ」
 一方的な展開で迎えた“最終ラウンド”。さらに亀田家が内藤に容赦なく畳みかけた。


内藤「なんのために戦うか?(アンチ亀田の)国民のためです」
興毅「よっしゃ、よっしゃ。きっちり答え出せや。国民のためにな」
内藤「俺はKOとは言わない。勝ちにこだわります」
大毅「俺はKOするよ。見とってくれれば分かる。俺のパンチは宇宙一や」


 亀田家のパワーに圧倒され、完全に委縮してしまった内藤。対照的に前哨戦で圧勝した亀田家の“ボス”史郎氏は「この会見を見たら勝負が分かるやろ」と自信満々。亀田軍団を引き連れ、威風堂々と会場を後にした。


【デイリースポーツ 2007-10-11

内藤“国民”のため亀退治宣言


 王者・内藤は計量を一発でパスすると“亀退治”を堂々宣言。「亀田は大きいことを言って、いつも圧勝する。負ける姿を見たい人、あの鼻をへし折ってやれと思っている人もいる。国民の期待に応えたい」と“国民=アンチ亀田”と置き換えて、言葉に力を込めた。
 調印式では亀田家の総攻撃にタジタジだったが、計量を終えると怒りを示すこともなく大人の対応に終始。「初めて(亀田家と)会ったけど、テレビのまんまだなあって思いましたよ。失礼な親子だなと頭にくるかなと思ったんだけど、家族愛を感じてあまり頭にこなかった」と挑戦者の挑発を受け流した。
 それでも大毅の“切腹宣言”だけは想像の域を超えていた。「びっくりしたよ。本当に勝つと思っているんだね。あの勘違いが怖いよ」と言いながらも「僕が勝った時にはぜひやってもらおう」と乗り気。「刀を用意するという話も出たけれど、銃刀法違反で捕まるのでなしにしました」と笑いを誘った。


【デイリースポーツ 2007-10-11

亀田大毅、最年少王座奪うか/11日、内藤と世界戦


 両者の因縁は、内藤が日本王者時代、外国人としか試合をしない亀田兄弟に「たまには日本人とやろうよ」と挑発したことに始まる。
 4日の予備検診で大毅は、内藤がかつて学校でいじめられた経験があることを取り上げ、「情けないチャンピオンを倒すだけ。おれはいじめっ子や」。史郎トレーナーも内藤を「ゴキブリ」とこき下ろしている。
 内藤は「馬鹿にしすぎ。親までそんなことを言うか? そういうのを含めて負けたくない」と闘志を燃やす。


朝日新聞 2007-10-11

報われた努力の内藤 本質が問われた世界戦


 予想通り、内藤が大差の判定勝ちを収めた。亀田大は初黒星を喫し、祭りは終わった。大きな話題を呼んだこの試合、実はボクシングの本質が問われていた。
 ボクシングは鍛えられた男同士による強烈なファイトが人気を支えてきた。同時に「ルールのあるけんか」でもある。それを逸脱したとき、スポーツではなくなり、ファンに見放される。12回、大毅はレスリング行為で前代未聞の3点の減点。お粗末の一言だ。
 闘いはリング上だけではない。プロなら派手な舌戦、パフォーマンスも悪くはない。しかし、許容範囲があり、「言ってはいけないこと」を口にするのは言語道断。「アンチ亀田」が生まれたのも常識外れの言動にあきれたからだろう。
 大毅も、父の史郎トレーナーも内藤を「ゴキブリ」と何度も呼び捨ててきた。さらに、公式記者会見で大毅は「負けたら切腹」とまで言い放った。
 これでは努力の男、内藤は負けるわけにはいかない。「リング上を見ていて下さい」とひたすら勝利を目指し、神様は真摯さにほほ笑んだ。


中国新聞 2007-10-12】


 距離を詰める大毅に対して、チャンピオン内藤は終始、老獪ともいえるクリンチで逃げ切った。チャンピオンの見事なテクニックといえよう。クリンチに対して、何度も何度も首をかしげる大毅選手が何とも哀れだった。


 場内に響き渡った「内藤コール」を見ると、亀田一家は完全なヒール(悪役)と化したように思う。「勝っても謙虚になれない」底の浅さに皆、辟易していたのだろう。傍若無人な態度が、たとえ演出だったとしても、内藤のような苦労人の前では馬脚を現してしまった。


 大毅選手は、まだ未成年である。大口を叩いた分だけ、心に傷を負ったことだろう。せめて、彼の辞書に「自業自得」という言葉が付け加えられるよう、祈ってやまない。“弱い選手ほど強がる”ことが証明された試合だった。