古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

高橋昌一郎


 1冊読了。


 133冊目『知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性高橋昌一郎〈たかはし・しょういちろう〉(講談社現代新書、2010年)/天才本。高橋さん(※ツイッターでやり取りしたことがあるので敬称をつける)の翻訳能力は凄い! お世辞抜きで講談社現代新書の高橋三部作(『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』と『理性の限界 不可能性・確定性・不完全性』)は必読だ。定期的に読み返した方がいいだろう。余談の入れ方と宗教への配慮(間違いなく配慮だよ)が絶妙なバランス。知識がある人ほど楽しめる内容となっている。知性とは懐疑というスロットルを全開にしながら怒濤の前進を続けることなのだろう。超オススメ。

『現代科学論の名著』村上陽一郎編(中公新書、1989年)



現代科学論の名著

「科学とは何か」をラディカルに問う名著12冊のブックガイド。ホワイトヘッド『科学と近代世界』、バシュラール『否定の哲学』、シュレーディンガー『生命とは何か』、マンハイムイデオロギーユートピア』、ウィトゲンシュタイン論理哲学論考』、ポパー『推測と反駁』、ハンソン『科学的発見のパターン』、クーン『科学革命の構造』、ファイヤーベント『方法への挑戦』、サックレー『原子と諸力』、大森荘蔵『物と心』、広重徹『科学の社会史』。

『テロリズムを理解する 社会心理学からのアプローチ』ファザーリ・M・モハダム、アンソニー・J・マーセラ編/釘原直樹監訳(ナカニシヤ出版、2008年)



テロリズムを理解する―社会心理学からのアプローチ

 なぜテロが起こるのか? なぜテロ行為に至るのか? テロリズムとは何か? 全米最大規模の心理学会であるアメリカ心理学会(APA)が9.11後、その「知」を結集し、国際テロリズムの心理・社会的起源とその影響の解明を試みた大著。テロの定義から、分類、歴史、心理社会的背景、テロリストの行動のメカニズム、避難民の問題、9.11の被災者の援助に関わった心理学者の体験など多様な論考、分析を通し「テロリズム」を再考する。

世界が沈黙する中でルワンダ大虐殺は行われた

 ツチ族のジェノサイドは、よく言われているような「ルワンダ人のジェノサイド」ではない。確かにその虐殺は、ルワンダにおいてルワンダ人がルワンダ人に対して行い、ルワンダ人が終わらせたという特徴を持っている。しかし、1994年の4月から7月にかけて、4ヶ月の間に1日1万人の割合で殺害された――総計約100万人――が犠牲となったこの虐殺は、圧倒的な沈黙の中で行われた。ちょうど、ワシントンではホロコースト記念館が開館し、西欧列強が連合国軍のノルマンディ上陸50周年を祝って、異口同音に「二度と繰り返すな!」と自ら言い聞かせていた時に。


【『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』レヴェリアン・ルラングァ/山田美明訳(晋遊舎、2006年)】


ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

決意

 もっとも注目されていたウェルター級のマーク・ブリーランドは、オリンピックで見たかぎり失望の一語に尽きた。ガードを下げ、ヒョイヒョイと動き回るだけで、放つブローに決意というものがこもっていない。


【『彼らの誇りと勇気について 感情的ボクシング論』佐瀬稔世界文化社、1992年)】


彼らの誇りと勇気について 感情的ボクシング論

ロートレックが生まれた日


 今日はロートレックが生まれた日(1864年)。自身が身体障害者として差別を受けていたこともあってか、娼婦、踊り子のような夜の世界の女たちに共感。彼女らを愛情のこもった筆致で描いた。ポスターを芸術の域にまで高めた功績でも美術史上に特筆されるべき画家である。


ロートレック (アート・ライブラリー) ロートレック (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシックアートシリーズ) ロートレック―世紀末の闇を照らす (「知の再発見」双書) ロートレック (新潮美術文庫 31)

ダーウィンの『種の起源』が出版された日


 今日はチャールズ・ダーウィンがイギリスで『種の起源』を出版した日(1859年)。完全な題名は『自然選択の方途による、すなわち生存競争において有利なレースの存続することによる、種の起原』。科学にとどまらず、宗教的、哲学的論争を引き起こした。


種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫) 種の起源〈下〉 (光文社古典新訳文庫) ミミズと土 (平凡社ライブラリー) ビーグル号世界周航記――ダーウィンは何をみたか (講談社学術文庫)

スピノザが生まれた日


 今日はスピノザが生まれた日(1632年)。スピノザ汎神論は、神の人格を徹底的に棄却し、理性の検証に耐えうる合理的な自然論として与えられている。スピノザ無神論者では決してなく、むしろ理神論者として神をより理性的に論じ、人格神は民衆の理解力に適合した人間的話法の所産と論じた。


エティカ (中公クラシックス) スピノザ―実践の哲学 (平凡社ライブラリー (440)) スピノザの世界―神あるいは自然 スピノザ―「無神論者」は宗教を肯定できるか (シリーズ・哲学のエッセンス)