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英軍拘束下のイラク人死亡事件、兵士による「拷問」明らかに

 英軍は8日、同軍部隊が2003年の連合軍のイラク占領後にイラク南部バスラ(Basra)で拘束したイラク人男性が死亡した事件について、調査の結果、この男性が英軍兵士たちから「いわれなき暴力」を受けていたことが明らかになったと発表した。
 調査によると、ホテルのフロント係をしていたイラク人のバハ・ムーサ(Baha Mousa)さん(当時26)は、2003年9月に他のイラク人9人と共に英陸軍ランカシャー連隊に拘束され、頭巾をかぶせられた上で暴行され、過酷な環境に置かれた。
 2人の子をもつ父親だったムーサさんは、拘束から36時間後に死亡。肋骨や鼻の骨が折れるなど、体の93か所を負傷していた。
 3年に及んだ独立調査の結果、暴行に多数の兵士が加わっていたことが分かり、また事態を知っていながら報告しなかったとして同じく多くの兵士が「道徳的勇気の欠如」を非難された。調査報告は、こうした虐待の発生を回避できなかった点は英国防省に責任があり、03年3月に米軍主導のイラク侵攻に英軍が参加した際に、尋問手法に関する適切な指針を示していなかったと指摘した。
 英陸軍参謀総長ピーター・ウォール(Peter Wall)大将は陳謝し、「バハ・ムーサ氏の死に関わる恥ずべき状況は、英軍の評判に暗い影を投じるものであり、こうしたことが2度と起こってはならない」と再発防止を誓った。
 この事件に関しては7人の兵士が05年に訴追されたものの、6人は軍法会議で無罪となっている。しかし、デービッド・キャメロン(David Cameron)首相は「今回の調査の結果、さらなる法的措置を可能とする証拠が出れば、措置を取るべきだ」と述べた。
 ムーサ氏の死因について調査は、虐待によって負傷し衰弱した状態で、極暑の場所に置かれ、食料や水も与えられなかったことによる複合的な結果だったと報告している。
 けがの多くを負わせたのはドナルド・ペイン(Donald Payne)元受刑者1人だったが、調査を担当したウィリアム・ゲージ(William Gage)元判事は、ペイン元受刑者が被拘束者たちを次々に殴る蹴るなどしてうめき声の「コーラス」を起こさせるといった「極めて陰湿な」虐待を行っていたと報告した。
 ペイン元受刑者は、民間人に対する非人道的扱いで07年に有罪となり、1年間の禁錮刑に処され、戦争犯罪で有罪となった英軍初の例となった。その1年後、英国防省はムーサ氏の遺族と、拘束されていた他のイラク人に計283万ポンド(約3億5000万円)の慰謝料を払うことに合意した。
 英軍では1972年に頭巾の使用や苦痛を与える過酷な場所での拘束を禁止しているが、ゲージ元判事はこの禁止事項に対する認識が欠落していたと指摘するとともに、それは国防省の「組織的な過失だ」と非難。こうした虐待行為はペイン元受刑者が所属していた部隊では「標準的な作戦手順」だったが、「まったく容認してはならないことだ」と述べた。


AFP 2011-09-09