古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『吉祥天女』吉田秋生(小学館文庫、1995年)



吉祥天女 (1) (小学館文庫) 吉祥天女 (2) (小学館文庫)

 昔々、天女が地上に降り来たり、神官の息子と夫婦になった……。伝説的な由来をもつ叶家の娘・小夜子が街に帰ってきた。17歳。凄絶な美貌。地に囚われた自らの運命を呪う少女。そして転入先の高校には、叶家の財をねらう遠野家の暁と涼がいた。陰謀渦巻くこの街で、小夜子の領域を侵す者が次々に死んでゆく。青春の白日夢にも似た、吉田秋生の幻想綺譚。


 小夜子に魅入られるように男たちは惑乱し、死んでゆく。遠野の家では、小夜子をその怪物性に恐れつつも愛した涼が、ひとり破局を押し止めようとしていた。しかし事態は悲劇的結末めがけて走り始める……。羽衣を奪われた天女・叶小夜子。傷ついた少女の魂の化身。いつの日にか魂を鎮め、吉祥天・愛の女神になれるだろうか。

東電のカネに汚染した東大に騙されるな!

 寄付講座だけで、東電は東大に5億円も流し込んでいる。一方、長崎大学は、その買収的な本性に気づき、全額を東電に突き返した。水俣病のときも、業界団体は、東大の学者を利用して世論操作を行い、その被害を拡大させてしまっている。いま、同じ愚を繰り返してはならない。


純丘曜彰〈すみおか・てるあき〉大阪芸術大学芸術学部哲学教授

東京電力の隠蔽体質

 同社(※東京電力)は1971年に福島で最初の原発を稼動させて以来36年、これまで大小幾多の事故を起こしながら、小規模であれば「軽微で安全性に問題なし」、放射能を漏らしても「人体に影響なし」を繰り返し、重大事故は隠してきた。それによって官僚同様、自らの無謬性を保つことに腐心してきた。しかし、2002年には炉心隔壁ひび割れという重大な事故を隠してきたことが発覚。当時の首脳陣が一斉に退陣を余儀なくされるという、企業としては大きな打撃を受けた。


【『東京電力 暗黒の帝国』恩田勝亘〈おんだ・かつのぶ〉(七つ森書館、2007年)】


東京電力・帝国の暗黒

生きる力

 すべてがその静寂の中で止まった。死ぬ前の最後の鼓動であり、生命の次の鼓動だ。わたしは家の中に一人きりでいた。一人で待っていた。自分の人生の先端で待ち、まるで世界全体が宇宙の峡谷の崖っぷちで息を止めているようだった。何かが起こりそうで、子供と警官と女が記憶の中で一つになる。その感覚こそ生きる力だ。


【『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド駒月雅子訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2006年/ハヤカワ文庫、2008年)】


あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(※左がポケミス、右が文庫本)