古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『吉祥天女』吉田秋生(小学館文庫、1995年)



吉祥天女 (1) (小学館文庫) 吉祥天女 (2) (小学館文庫)

 昔々、天女が地上に降り来たり、神官の息子と夫婦になった……。伝説的な由来をもつ叶家の娘・小夜子が街に帰ってきた。17歳。凄絶な美貌。地に囚われた自らの運命を呪う少女。そして転入先の高校には、叶家の財をねらう遠野家の暁と涼がいた。陰謀渦巻くこの街で、小夜子の領域を侵す者が次々に死んでゆく。青春の白日夢にも似た、吉田秋生の幻想綺譚。


 小夜子に魅入られるように男たちは惑乱し、死んでゆく。遠野の家では、小夜子をその怪物性に恐れつつも愛した涼が、ひとり破局を押し止めようとしていた。しかし事態は悲劇的結末めがけて走り始める……。羽衣を奪われた天女・叶小夜子。傷ついた少女の魂の化身。いつの日にか魂を鎮め、吉祥天・愛の女神になれるだろうか。