古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブック』スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス/武藤崇、原井宏明、吉岡昌子、岡嶋美代訳(星和書店、2010年)



ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブック

 アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、最新の科学的な心理療法です。新次元の認知行動療法とも言われ、急速に世界中で広まっています。今までの心理療法が、人間の苦悩を変化させようとしたり、除去しようとして、どれだけ成功したでしょうか。ACTにおいては、私たちはなぜ悩むのか、精神的に健康であるということは何なのか、と言いうことに新たな見方を提供します。苦悩は、避けられないもので誰にでもあるものです。だから苦悩を避けようとかコントロールしようとすることが、さらなる苦悩の原因となり、問題が長引き、生活の質を破壊します。ACTでは、苦悩のように個人のコントロールの出来ないものをアクセプト(受け入れ)し、自分の求める生き方を自覚し、生活を豊かにする方法を提供します。本書は、楽しくエクササイズを行いながらその方法を身につけられる、セルフヘルプのためのワークブックです。よりよく生きるためのコツが満載です。

ビッグバン宇宙論

 ・太陽系の本当の大きさ
 ・相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る
 ・枕には4万匹のダニがいる
 ・あなた個人を終点とする長い長い系図
 ・陽子
 ・ビッグバン宇宙論
 ・進化論に驚いたクリスチャン

『人類が生まれるための12の偶然』眞淳平:松井孝典監修
『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット
・『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司
『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』スティーヴン・ウェッブ
『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド

 ビッグバンという考え方にしても、まだ日が浅い。登場したのは1920年代で、聖職者でもあったベルギーの天体物理学者ジョルジュ・ルメートルが初めて提唱した理論だが、当時はたいして騒がれることもなかった。宇宙論でにわかに注目を浴びるようになったのは、1960年代半ばに入ってからだ。


【『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン:楡井浩一〈にれい・こういち〉訳(NHK出版、2006年)以下同】

 ビッグバン宇宙論というのは爆発そのものに関する理論ではなくて、爆発後に何が起こったのかについて論じる学説だ。爆発後といってもそれほどあとの話ではない。科学者たちは、山ほど数学の問題を解き、粒子加速器内のようすをつぶさに観察することで、創造の瞬間から10の-43乗秒後の、まだ顕微鏡なしには見つからないくらい小さかった宇宙を眺めることが可能だと信じている。わたしたちも次々に登場するとんでもない数字に感嘆の声ばかりあげていないで、ときにはそれをしっかりつかまえて、その茫とした大きさをきちんと確認したほうがいいだろう。というわけで、10の-43乗は、0.0000000000000000000000000000000000000000001、すなわち1秒の1兆分の1をさらに1兆分の1にして、それをまた1兆分の1にして、さらにまた1000万分の1にした時間に当たる。


 

虚勢の権化

 アンドレ・ルイは、相手を、ばかばかしい男だと思った。えらそうにするのは、値打ちのないことや弱さをかくすためだ、ということを彼は知っていた。そして、いまここに虚勢の権化を見た。それは尊大な頭のそらし方にも、しかめた眉にも、とどろきわたる声の抑揚にも読みとることができた。従僕の目に英雄と映るのはむずかしいが──従僕は堂々たる全体をなしている部分部分が、ときどきバラバラになるのを見ているからだ──別な意味で同じ現象を見ている人間研究家の目に英雄に見えるのは、もっとむずかしいことだった。


【『スカラムーシュラファエル・サバチニ/大久保康雄訳(創元推理文庫、1971年)】


稲垣足穂が生まれた日


 今日は稲垣足穂が生まれた日(1900年)。人間を口から肛門にいたるひとつの筒と見立てたエッセイ「A感覚とV感覚」を、独自の一元的エロス論として評価した澁澤龍彦をはじめ、多くの人から尊敬を集めた。すべての自作を処女作「一千一秒物語」の注釈であると宣言している。


一千一秒物語 (新潮文庫) A感覚とV感覚 (河出文庫―稲垣足穂コレクション) 足穂拾遺物語