1冊読了。
127冊目『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン/中尾ゆかり(NHK出版、2006年)/これは面白かった。443ページで3360円は安いと断言しておこう。テンプル・グランディンは自閉症(アスペルガー症候群)である。で、自閉症者は動物に近い感覚を持っているとのこと。動物の気持ちを理解することができるから「動物感覚」というタイトルになってるわけ。腰を抜かしたのはプレーリードックが名詞、動詞、形容詞の意思伝達システムがあるそうだ。つまり言葉を持っているのだ。そこから著者は意識があるかどうかを探っている。もう一つ。人と犬との付き合いは古く、元々はオオカミと一緒に生活していた。で、人はオオカミから様々なことを学んだというのだ。例えば組織だった狩猟の仕方など。その頃、オオカミと人とは対等な関係だったに違いないとテンプル・グランディンは記している。トール・ノーレットランダーシュを読んだ時と同じような昂奮を覚えた。傑作だ。
ヨーロッパ植民地主義の支援のもとに目的を遂げようとしたシオニズム運動は「アジアに対するヨーロッパの防壁となり、野蛮に対する文明の前哨」(ヘルツル『ユダヤ人国家』)としての役割を果たすと約束し、ユダヤ人国家設立を支持してくれるよう、諸国に頼んだ。
やがてイギリスは、ユダヤ民族郷土(ナショナル・ホーム)の建設の後ろ盾となることを約束する「バルフォア宣言」(1917年)を出す。イギリスは、この宣言と引き換えにユダヤ人の第一次大戦での協力をとりつけたのである。このバルフォア宣言によって、パレスチナ人の悲劇が、ほぼ確定したといってよい。
パレスチナ地方を支配するために、イギリスは、外部から対立要因をもちこむことにした。ヨーロッパで迫害にあっているユダヤ人たちのパレスチナ入植を支援し、現地のパレスチナ人と対立させようと考えたのである。
「分割して統治する」をモットーとするイギリスは、基本的にはユダヤ人移民を歓迎した。ヨーロッパからの移民は、イギリスの後ろ盾を受けて入植してきたし、彼らが現地に住むパレスチナ住民と摩擦を起こすことは、イギリスにとっては有利なことだったからである。独立を求める強いアラブは、望ましいものではなかった。パレスチナ内部に撹乱要因をつくって、消耗させることが必要だったのだ。
ユダヤ人は、1000年にわたって、ヨーロッパで生活し、ロシア、ポーランド、ギリシャ、イタリア、フランス、イギリスなどに分散していた。彼らが唯一保存していたのはその宗教であり、「選ばれた民」という考えだった。……(中略)
特にローマ教会がキリストはユダヤ人に殺されたと宣言して以来……
このために
1290年にイギリスから、1306年にフランスから、1492年にスペインから、1550年にドイツから追放されることになった。
【『リウスのパレスチナ問題入門 さまよえるユダヤ人から血まよえるユダヤ人へ』エドワルド・デル・リウス/山崎カヲル訳(第三書館、2001年/旧版、1983年)以下同】
西暦135年にはイギリスも、フランスも、米国も、ポーランドも、ロシアも、ドイツも国家としては存在していなかったのだ! それなのに、ユダヤ国家だけは特別扱いされる!
20世紀のまっただなかで、こんな時代錯誤を真剣に主張するなんておかしなことだ。2000年近い昔に消滅した国家をどんな権利で再建できるのだろう!!
イギリスの銀行(ロスチャイルド、メイヤー、スペイヤー等の……つまりユダヤ系の)は、第一次世界大戦の戦費を融資してきた。
イギリスはユダヤ系(シオニスト)銀行に負債をおっており、その支払の一部として、シオニストがパレスチナをくれと言っても、反対できる立場にはなかった……
さてこの時期に第一次世界大戦の戦勝国(主としてフランス、イギリス、イタリア、米国)を中心に、国際連盟が作られていた。これら諸国は全て、ユダヤ系金融資本の利害と結びついており、国際連盟は要するに、イギリスの決定を支持することになる……
今日はバルフォア宣言の日(1917年)。第一次世界大戦中に、英外相アーサー・ジェームズ・バルフォアが、イギリスのユダヤ人リーダーであるライオネル・ウォルター・ロスチャイルドに宛てた書簡でイギリス政府のシオニズム支持を表明した。パレスチナの悲劇は今日も尚続いている。