古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『昭和 闇の支配者』(全6冊)大下英治(だいわ文庫、2006年)



黒幕―昭和闇の支配者〈1巻〉 (だいわ文庫) 政商―昭和闇の支配者〈2巻〉 (だいわ文庫) 首領(ドン)―昭和闇の支配者〈3巻〉 (だいわ文庫)


錬金術師―昭和闇の支配者〈4巻〉 (だいわ文庫) 経済マフィア―昭和闇の支配者〈5巻〉 (だいわ文庫) 謀略―昭和闇の支配者〈6巻〉 (だいわ文庫)

 日本の政財界に暴力とカネで君臨した右翼・児玉誉士夫。戦中、中国で“児玉機関”を設立し莫大な資産を形成。戦後はそのカネで鳩山一郎をバックアップ、保守政党に絶大な影響力をもつ。左翼に対抗すべく全国のヤクザの糾合をはかる一方、フィクサーとしても暗躍。その最たるものが「ロッキード事件」である。「事件の陰に児玉あり」と語られた戦後最大の黒幕が操った昭和裏面史。


 田中角栄の“刎頚の友”であり「昭和の政商」と呼ばれた小佐野賢治。極貧の育ちから徹底した拝金主義者となり、一代で国際興業グループを築く。横井英樹児玉誉士夫ら大物フィクサーと三つ巴の乗っ取り劇を多数繰り広げ、その個人資産は前例のない巨額に。「ロッキード事件」で撃沈されるも、最後は帝国ホテル会長就任の悲願を達成した。政治家を食いつくした男のあくなき成功欲と支配欲。


 巨大組織「稲川会」を一代で築いた稲川聖城。19歳で任侠界に入り、戦後の混乱期、外国人の暴力で無法地帯と化した街を救う一方、愚連隊を次々と傘下に収め、組を急成長させる。関東進出を狙う山口組、右翼・児玉誉士夫の野望、警察庁暴力団頂上作戦―血の抗争と制圧! 日本の深部を牛耳った男の激動の秘録。


 老舗デパート「白木屋」騒動で乗っ取り屋元祖となった横井英樹。赤貧の生い立ちからカネと栄誉を求め、東急グループ五島慶太と組んで乗っ取りに次ぐ乗っ取りで大旋風を巻き起こす。安藤組の襲撃にもその猛進は止まらず、ついに「ホテルニュージャパン火災」で有罪に。企業を喰い荒らした欲望の虚業家の、悪の錬金術と執念。


 株主総会を舞台に、人事とスキャンダルで合法的に荒稼ぎをした総会屋。大企業に深く食い込み、裏支配する日本独特の存在である。広島県出身者の武闘派集団「広島グループ」を率いた小川薫。第一勧銀と四大証券から巨額の利益供与を受けた小池隆一。日本最大の「論談同友会」を組織した正木龍樹。大物総会屋がとりしきった闇経済の構図。


 田中金脈、日本船舶振興会疑惑、三越乱脈経営、リクルート…大手マスコミに先駆けて闇情報とスキャンダルを嗅ぎつける“ブラックジャーナリスト界の帝王”五味武。蛇の目ミシン株仕手戦で小佐野賢治に打ち勝ち、稲川会と組んで企業を喰い荒らす小谷光浩。政財界謀略事件史の中枢を占める大事件を操る者は誰か。

格差問題@一票の価値


 実際に、神奈川県では70万票近くを獲得しながら落選した候補者がいる一方で、鳥取、徳島、高知県では16万票以下でも当選です。そこで今日は、「もしも、得票数の多い順に当選していたらどうなっていたのか」をみてみましょう。(Chikirinの日記)

時計のウンチクが満載/『ウォッチメイカー』ジェフリー・ディーヴァー

『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー
・『コフィン・ダンサー』 ジェフリー・ディーヴァー
『エンプティー・チェア』ジェフリー・ディーヴァー
・『石の猿』ジェフリー・ディーヴァー
・『魔術師(イリュージョニスト)』ジェフリー・ディーヴァー
・『12番目のカード』ジェフリー・ディーヴァー

 ・時計のウンチクが満載

『ソウル・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー
『バーニング・ワイヤー』ジェフリー・ディーヴァー
『ゴースト・スナイパー』ジェフリー・ディーヴァー


 リンカーン・ライム・シリーズの第7作。手に汗握り、悶絶のラストへ突入する様はジェットコースターそのものだ。富士急ハイランドFUJIYAMAええじゃないかを足したようなものと考えてもらえばよい。


 ディーヴァー作品の正しい読み方を教えて進ぜよう。ストーリーは必ず3分の2ほどでひと区切りつくので、それ以降はどんでん返しがあるたびに本を閉じ、翌日まで読むのを我慢するのだ。こうすれば多分、通常のミステリの5倍は楽しめるはずだ。


 シリーズものはサザエさん化を免れることができない。ディーヴァーファンの中には「食傷気味だ」なんて生意気を言っている連中もいるが、これは文章の細部に目が届いていない証拠だ。


 ウォッチメイカーとは時計師のことである。彼が創作するのは、もちろんクォーツを使わない機械時計だ。


腕時計の基礎知識/クォーツ腕時計


 その昔、時計を持つ者は「時を司る者」だった。人の一生は時に支配されている――

 私の姿は目に見えない。
 だが、私はつねにいる。
 力のかぎり走るといい。
 私から逃れられるものはない。
 力のかぎり闘うといい。
 私を打ち負かせる者はない。
 私は私の論理で人を殺す。
 法のもとで罰を受けることはない。
 さあ、私は誰だ?


“時”(とき)さ。


【『ウォッチメイカー』ジェフリー・ディーヴァー池田真紀子訳(文藝春秋、2007年)以下同】


 その時計師を名乗る犯人が次々と事件を起こす。時計好きの方であれば、読み終えるまで陶酔に身を浸(ひた)すことができる。ウォッチメイカーは時間に関することなら何でも知っていた――

「時間? 時間についてどんなことを話すの?」
「ありとあらゆることについてだよ。時間の歴史とか、時計の仕組みとか、暦(こよみ)のこととか、そのときの状況によって時間の進みかたが違って感じられるとか。たとえばさ、“スピードアップ”って言葉は振り子時計から来てるとかって話をする。振り子の重りを上(アップ)にずらすと、時計の進み方が速くなるだろう。反対に“スローダウン”は――重りを下(ダウン)にずらす……ふつうならさ、退屈な話だよな。だけどダンカンが同じ話をすると、つい聴き入っちまう」


 ディーヴァーは犯人の人物像を実に瑞々しい色合いで描き出す――

 ――知ってたか、ヴィンセント。“几帳面”(メティキュラス)って言葉は、“おびえる”という意味のラテン語“メティキュロサス”から来てるんだ。
 正確でないもの、秩序立ってないものを目にすると、頭をかきむしりたくなる。平行でない線路とか、少しだけ曲がった自転車のタイヤのスポークとかいったささいな欠陥であってもだ。何かが予定どおりに運ばないと、黒板を爪でひっかく音を聞いたときのように、神経が逆立った。


 人生は時間であり、歴史もまた時間である。時間は過去、現在、未来と流れ、我々は現在を生きている。にもかかわらず、時間は有限性を強烈に意識させ、我々はいたずらに過去に捉われたり未来を夢見たりしている。


 時間はどこに存在するのか? そもそも時間とは何なのか? 既に量子力学で明らかになっているが実は時間は連続して流れているわけではない。時間は過去と現在、現在と未来の比較の中に存在する。つまり時間とは概念なのだ。


 脳のシステムは概念を構築する。例えば神や幽霊というのも概念に過ぎない。要は概念としては存在するが、実体は存在しない。

【ビフォア・アンド・アフター】。
 人は前進を続ける。
 理由はどうあれ、人は前進を続け、ビフォアはアフターになる。


 現在は、過去と未来の分水嶺である。未来は存在しないが過去は存在すると我々は思い込んでいる。だが実際は過去も存在しない。過去は記憶の中にのみ存在しており、例えば記憶障害や認知症になれば消え失せてしまう。過去は淡い。その淡い過去が自我を形成している。


 光に時間は存在しない。世界が存在するのは光が世界を照らしているからだ。目に見える事物を仏典では「色法」(しきほう)と呼ぶが、色は光の反射である。世界には有無が混在している。有無という見(けん)から離れるところに「空」(くう)が現れる。


 色々な意味で時間を考えさせてくれる一冊だ。


財務省に洗脳された菅直人総理と追随する朝日新聞がもたらす「二番底」の危機


 洗脳というのはおそろしい。ある限度を超えると、洗脳者に教えてもらわなくても、被洗脳者が自ら理由を探し出して、自律行動するのだ。これまでこのコラムで再三指摘してきたように、菅直人総理は徹底的に財務省官僚の消費税増税洗脳を受け「菅落ち」した。
 ウリだった「草の根」が消えて、くさかんむりなしの「官さん」になったのだ。今の菅総理を見ていると、被洗脳者が自律行動にでているようだ。(高橋洋一

落合監督ではないが、「参院選」がもたらした結果の「俺流」分析。


 国民は基本的に戦争を放棄した変わりにアメリカの属国的なポジションを呑んでいる。が、国家の前提は「耐えがたきを耐え忍び難きを忍び」であるという最低限の認識を、最近の日本人は持っていない。つまり彼こそ、そのことを厭というほど認識させられた世代だから、「普天間問題」への幻想を持っている選挙民は基本的には「賢い」とはいえないのである。(岩下俊三)

自宅で死ぬと苦しまずに済む

「昔、家で看(み)取っていたときには苦しまないですんだんだ。弱ってくると人間は生理的脱水になる。つまり体中の水分が少なくなる。すると痛みや苦しみを感じなくなって、少しずつ、ちょうど飛行機が着陸するみたいに息を引き取った。ところが病院では脱水にしないために点滴を絶やさない。すると痛みを感じたまま、飛行機が墜落するように死ななきゃいけなくなった」
 これはある年老いた開業医の溜め息まじりの言葉である。先生はこう続ける。
「そうした死にかたよりももっと残念なのは、家族や本人がそれを望んでいることだよ。死に対して近代科学で抵抗しようとするんだなあ。気持ちは判るけど結局無駄な抵抗で、本人が苦しむだけなんだが。死に対してちゃんとふつうにつき合うということができなくなってるんだなあ」


【『老人介護 常識の誤り』三好春樹(新潮社、2000年/新潮文庫、2006年)】


 その上、何らかの形で「死のサイン」を発することが多いので、家族の心構えがしっかりしてくる。


老人介護 常識の誤り 老人介護 常識の誤り (新潮文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)

戦前の預金部が戦後の財政投融資制度に

 日本の戦争遂行を考えるときに、預金部という制度を抜きにしては語れない。もし、郵貯簡保、年金という預金部資金に頼らず、日清・日露戦争からアジア太平洋戦争に至る戦費をすべて税金で徴収したら、いくら戦前の日本でも厭戦(えんせん)気分が蔓延(まんえん)していたであろう。
 ところが、この預金部制度が戦後にほぼ無傷で生き残ってしまう。1954(昭和26)年9月8日、わが国はサンフランシスコにおいて連合諸国との間で講和条約に調印し、翌年4月28日からの発効によって独立を回復することになる。その直前の50年度に政府は「資金運用部資金法」および「資金運用部特別会計法」を制定、51年度の当初から預金部に代わり「資金運用部」を発足させていた。戦後の財政投融資制度の構築である。
 ここでの最大の問題は、創設以来の悪しき本質が、まったく修正されることなく戦後に引き継がれたことにあった。
 郵貯簡保、年金は、預ける側の国民にとっては大切な個人資産である。しかし、預かる側の政府にとっては税外の国庫収入という程度の認識でしかない。返済することにいっさい頓着(とんちゃく)することなく、あたかも税金と同じような感覚でこの「裏収入」を使い切ってしまうという悪弊が、そっくりそのまま戦後に残されてしまったのである。しかも、本来は政府の暴走を抑制すべき議会までもが、「族議員」に代表されるように、官僚と結託して、後先を考えない使い切り方式に積極的に加担してしまう。


【『「お金」崩壊』青木秀和(集英社新書、2008年)】


「お金」崩壊 (集英社新書 437A)