自宅で死ぬと苦しまずに済む

「昔、家で看(み)取っていたときには苦しまないですんだんだ。弱ってくると人間は生理的脱水になる。つまり体中の水分が少なくなる。すると痛みや苦しみを感じなくなって、少しずつ、ちょうど飛行機が着陸するみたいに息を引き取った。ところが病院では脱水にしないために点滴を絶やさない。すると痛みを感じたまま、飛行機が墜落するように死ななきゃいけなくなった」
 これはある年老いた開業医の溜め息まじりの言葉である。先生はこう続ける。
「そうした死にかたよりももっと残念なのは、家族や本人がそれを望んでいることだよ。死に対して近代科学で抵抗しようとするんだなあ。気持ちは判るけど結局無駄な抵抗で、本人が苦しむだけなんだが。死に対してちゃんとふつうにつき合うということができなくなってるんだなあ」


【『老人介護 常識の誤り』三好春樹(新潮社、2000年/新潮文庫、2006年)】


 その上、何らかの形で「死のサイン」を発することが多いので、家族の心構えがしっかりしてくる。


老人介護 常識の誤り 老人介護 常識の誤り (新潮文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)