古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

文響社の失敗作

『「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 完全翻訳版』シェリー・ケーガン:柴田裕之〈しばた・やすし〉訳(文響社、2019年)/縮約版も出ている。A5判で733ページある。失敗作と書いたのは内容ではなく本の作りである。いい紙を使っているため、縦に置くと紙の重みで中身が背表紙から離れてしまう。もう一つは表紙写真で、教壇の上に靴を履いたまま胡座(あぐら)をかいた姿が日本人には受け入れがたいと思う。内容はいかにも哲学講義らしく、まだるっこしい。仏教を学んだ者からすれば、「何を今更」といった代物である。たぶん文響社は『ソフィーの世界』の二番煎じを狙ったのではあるまいか。