古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

友の足音

 ・ブッダが解決しようとした根本問題は「相互不信」
 ・人を殺してはいけない理由
 ・日常の重力=サンカーラ(パーリ語)、サンスカーラ(サンスクリット語)
 ・友の足音
 ・真の無神論者

『仏陀の真意』企志尚峰
『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』くさなぎ龍瞬
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『自分を許せば、ラクになる ブッダが教えてくれた心の守り方』草薙龍瞬

 時代の流れとともに、その存在がますます意味を持ってきた思想家ヴァルター・ベンヤミンは、1916年の末に友に宛てた手紙の中で、こう述べています。
「真っ暗な闇の中を歩み通す時、助けになるものは、橋でも翼でもなく、友の足音である」
 ナチスの軍靴の音が高鳴る時代、「アウシュヴィッツの時代」に、アドルノホルクハイマー(20世紀ドイツを代表する社会学者、思想家)などの「魂の友」となり得たベンヤミンならではの言葉です。
 友とは暗闇の中ですがりつく対象ではありません。携帯で呼び出すと、飛んでくるだけの人ではありません。もちろん、友はそういうこともしてくれます。でも、それだけでは「都合の良い人」であっても友ではありません。
 友も歩いているのです。私のように歩いているのです。その存在を想うだけで、その足音だけで、私は一人で歩けるのです。姿が見えなくてもよいのです。離れていてもよいのです。
 私にとって、仏教という宗教は、このベンヤミンの言葉における「友」のニュアンスに近いものがあります。


【『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥第三文明社、2000年)】


ブッダは歩むブッダは語る―ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う

免疫学者の多田富雄さん死去 能楽にも深い関心

 国際的な免疫学者で、能楽にも深い関心を寄せた東京大名誉教授の多田富雄(ただ・とみお)さんが21日、死去した。76歳だった。葬儀は未定。
 多田さんは千葉大医学部卒。74年、同大医学部教授に、77年、東大医学部教授に就任。東京理科大生命科学研究所長などを務めた。81年度の朝日賞を受賞、97年からは朝日賞の選考委員だった。84年の文化功労者
 体内に侵入したウイルスや細菌などから身をまもる免疫細胞のひとつ、T細胞には、異物を攻撃するアクセル役のほかに、ブレーキ役があり、両者でバランスを保って暴走を防いでいることを明らかにした。免疫の働きが強すぎると、自分を攻撃する自己免疫病につながってしまう。これらの研究成果を一般向けに解説した「免疫の意味論」は93年第20回大佛次郎賞に選ばれた。
 青年時代から能楽に関心を寄せ、時に自ら小鼓を打った。脳死移植や原爆などをテーマにした新作能を次々発表した。
 01年に脳梗塞(こうそく)で倒れ、重い右半身まひや言語障害といった後遺症を抱えたが、リハビリを続けて左手でパソコンを打ち、朝日新聞文化欄に能をテーマに寄稿するなど、意欲的な文筆活動を続けていた。


asahi.com 2010-04-21

黒シール事件−石原慎太郎のレイシズム

 若手の論客として知られた新井将敬という政治家がいた。東大卒、旧大蔵省のキャリア官僚出身のエリートだったが、株取引での利益供与を要求した証券取引法違反容疑が浮上し、衆院が逮捕許諾の議決をする直前に自らの命を絶った▼在日韓国人として生まれ、16歳の時に日本国籍を取得した新井氏は1983年に旧衆院東京2区から初出馬、落選した際に悪質な選挙妨害を受けた。選挙ポスターに「元北朝鮮人」などと書いた黒いシールを大量に張られたのだ▼それを思い出したのは、永住外国人への地方参政権付与に反対する集会で、石原慎太郎東京都知事が「(帰化した人や子孫が)国会はずいぶん多い」などと発言したからだ▼選挙区内の新井氏のポスターにせっせとシールを張って歩いたのは、同じ選挙区の現職だった石原知事の公設第一秘書らだった。「それ(帰化)で決して差別はしませんよ」と集会で知事は語ったが、彼の取り巻きが過去にしでかしたことを思い起こせば、そんな発言を誰が信じよう▼与党幹部には帰化した子孫が多いという発言の根拠はインターネットだという。そりゃあ、石原さん、いくらなんでもちょっと無責任すぎるよと言いたくなる▼あからさまな差別的発言を大きく報道したメディアは本紙だけだった。「またいつもの放言だ」と取材側がまひしているならかなり深刻だ。


【筆洗/東京新聞 2010-04-20】

民衆が語る中国 1 紅衛兵誕生へ


 陰惨な暴力を振るった元紅衛兵達が、笑みを湛(たた)えながら過去を振り返っている。罪悪感はどこにも見られない。それどころか昂揚感すら漂っている。国家の暴力を受け入れる彼等が、暴力を肯定するのも当然か。







資本主義経済と市場経済

資本主義経


 封建制の次に現れた経済体制で、産業革命によって確立された産業経済体制。この仕組みの中では、資本が投下され、利潤を生んで回収されるために、経済の中心を資本の自己増殖運動ととらえることもできる。それゆえに「資本主義」と呼ばれる。


【『ドンと来い! 大恐慌藤井厳喜〈ふじい・げんき〉(ジョルダンブックス、2009年)以下同】

市場経済


 生産や消費が主に市場によって社会的に調整される経済制度。企業や個人は市場で自由に経済活動を行い、財の需要と供給が決定される。


ドンと来い!大恐慌 (ジョルダンブックス)