古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい』向野幾世

 ごめんなさいね おかあさん
 ごめんなさいね おかあさん
 ぼくが生まれて ごめんなさい
 ぼくを背負う かあさんの
 細いうなじに ぼくはいう
 ぼくさえ 生まれなかったら
 かあさんの しらがもなかったろうね
 大きくなった このぼくを
 背負って歩く 悲しさも
「かたわな子だね」とふりかえる
 つめたい視線に 泣くことも
 ぼくさえ 生まれなかったら


 ありがとう おかあさん
 ありがとう おかあさん
 おかあさんが いるかぎり
 ぼくは生きていくのです
 脳性マヒを 生きていく
 やさしさこそが 大切で
 悲しさこそが 美しい
 そんな 人の生き方を
 教えてくれた おかあさん
 おかあさん
 あなたがそこに いるかぎり


(※詩の中に不適切ととられかねない用語がありますが、障害児本人の作品であり、原文を尊重しました)


 身体も言葉も不自由な少年が紡ぎ出した一片の詩。その言葉の重みに私は耐えられない。