古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

死刑囚の手紙

 そして千葉さんが執行の判をおして死刑が執行された死刑囚の手紙がわたしには衝撃だった。
 彼はこう書いていた。
「人は未来があるから、反省し後悔し、そして罪と向き合おうとする、けれど死刑が確定したら、もう反省する必要もないし、自分の罪と向き合う必要もなくなってしまう、自分が反対に家族を殺されたりしたら、犯人をけしてゆるさないし殺したいと思うだろう……でも本当に罪と向き合って反省し苦しむためには死刑ではないと思う」


S家の別宅


 他人を殺した人物の人間らしさ。後悔先に立たず。

1500年前後の出来事

 いま、時代の位置に見当をつけるため、こころみに、1500年をはさむ前後における著名な出来事を二、三ひろってみれば、まず、1492年におけるコロンブスアメリカ発見を挙げることができよう。これにつづいて、ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路の開拓(1498年)、マジェラン一行の世界周遊(1522年)など、これらの地理上の発見によって旧世界の人々の視界は外に向ってとみに広くなろうとしていた。また、グーテンベルクが金属活字による印刷術を発明したのは15世紀の中葉であって、このため、いままで一部の人に独占されていた知識がようやく一般にゆきわたろうとする勢いを示しはじめた。さらにまた、1517年にはルターによって宗教改革の火蓋が切られ、1543年にはコペルニクスがその地動説を発表している。こうして、中世以来重苦しくヨーロッパの上におおいかぶさっていた教会の権威は、ガリレオの宗教裁判にいたる動揺の歴史の途上にあった。


【『零の発見 数学の生いたち』吉田洋一(岩波新書、1939年)】


零の発見―数学の生い立ち (岩波新書)

西周が生まれた日


 今日は西周〈にし・あまね〉が生まれた日(1829年)。江戸時代後期の幕末から明治初期の啓蒙運動家、教育者。貴族院議員。西洋語の「philosophy」を音訳でなく翻訳語として「哲学」という言葉を創ったほか、「芸術」「理性」「科学」「技術」など多くの哲学・科学関係のことばは西の考案した訳語である。


西周―兵馬の権はいずこにありや (ミネルヴァ日本評伝選) 西周の政治思想―規律・功利・信 西周と日本の近代