赤ちゃんからの働きかけによって芽生える母性本能
(メスチンパンジーの)アイもクロエもパンも、出産しただけでは「母」にはなれなかったのである。赤ん坊の側から「しがみつく」「吸いつく」というはたらきかけと人間の介助があって、初めて「母性」が芽生えたのだ。
松沢(哲郎)は、「子育ては種族繁栄の基本的な行為なのに、本能に組み込まれていない。それは、子育ては子どもの個性に対応してやる必要があるから、あらかじめ決められた一つの方法ではかえって不都合が生じるからかもしれない」と考えている。
【『子供の「脳」は肌にある』山口創〈やまぐち・はじめ〉(光文社新書、2004年)】
・『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
聖書の解釈権はローマ法王にしか存在しなかった
かつてキリスト教における聖書の解釈権は、ローマ法王にしか存在しなかった。プロテスタンティズムは、この解釈権を個人が自由に持つための運動だった。アメリカでは、かつての聖書の解釈権を独占した法王のように、アメリカ民主主義の解釈権をアメリカ大統領が独占しているという構図になっている。聖書の解釈権さえ、大統領が持っているのではないかと感じさせたのがイラク戦争だった。本来、イスラム教やキリスト教は平和な宗教である。それがテロを起こしたり、戦争を起こしたりするのは、十字軍の時代からプリンシプルを具象へ適用する解釈権が、政治権力に集中してきたからである。少なくとも民主主義のもとでは、特定の権力にプリンシプルの解釈権が集中するのは、国民の大半が支持するからである。怖いのは、国民の大半の支持が何らかの洗脳的手法により、その解釈が正しいと思わされている場合である。
【『洗脳護身術 日常からの覚醒、二十一世紀のサトリ修行と自己解放』苫米地英人〈とまべち・ひでと〉(三才ブックス、2003年)】