ある市場に入ってきている資金は、ほかのどこでも活用できる資金です。その資金には金利というコストがかかっています。そのコスト以上の利回りで運用されなければロスを出しているに等しいといえます。あるいは、インフレ上昇率以上の利回りが得られなければ目減りします。株式、債券市場の発行体も投資家もすべて自分が取ったリスクのリターンを欲しています。
この、なんとかペイさせたい、儲けたいという究極の目的は同じでも、人によって好むリスクの種類や取り方がさまざまなために、相場が成り立っているといえます。そしてそのリスクとリターンは、バランスシートのようなもののうえで、常に見合っていると考えます。したがって、リスクのない夢のような儲け話などは存在しないのです。
たとえば割引国債(ゼロクーポン)を単純に見ると、一見、夢のような話でしょう。50で買ったものが、償還時には確実に100になるのです。しかし、割引国債の購入者はインフレリスクをもろに背負い、ほかの投資物件への機会利益を放棄しています。国債といえどクレジット(信用)リスクもゼロではありません。すなわち、将来何が起こるかわからないという時間のリスクを取っているのです。夢のような儲け話とは50で買ったものが、その瞬間に100で売れることです。そこには価格変動のリスクはありませんが、しばしば犯罪につながるリスクが存在します。
【『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新〈やぐち・あらた〉(パンローリング、2001年)】
フィリップ・クローデル、ヴィカス・スワラップ
1冊挫折、1冊読了。
挫折28『灰色の魂』フィリップ・クローデル/高橋啓訳(みすず書房、2004年)/体力不足のため後回しにする。これは必ず読む予定。
59冊目『ぼくと1ルピーの神様』ヴィカス・スワラップ/子安亜弥〈こやす・あや〉訳(ランダムハウス講談社、2006年/ランダムハウス講談社文庫、2009年)/「どうせ出来過ぎた話なんだろ?」と思いながら読んだ。確かにその通りだった。それでも滅法面白かった。最後のシーンなど泣かずにはいられなかった。孤児の少年ラムがテレビのクイズ番組で全問正解し大金を獲得する。これを支払うことができない番組制作会社が警察と共謀して、ラムが不正を犯したことにしようと企む。警察にしょっ引かれ、拷問されるラムのもとへ一人の女性弁護士が駆けつける。まともな教育も受けず、スラム街に住む少年がなぜ難しいクイズの全てに答えることができたのか? 物語は少年の過酷な人生を描き始める。ラストで二つひねりを入れて、完璧な着地を決めた鉄棒さながらの作品だ。童話のようでありながらも、深い人生哲学が語られている。文句なしの傑作。
本物の右翼
若いとき三島由紀夫や保田ヨシロウと食事したことがあるが、本当の右翼は物静かで、貧困にたいする思いやりがつよい。財閥をたおして民を助けるという意味では右も左もない。
【「派遣村で格差社会はなくならない」岩下俊三】