相場におけるリスクとリターン

 ある市場に入ってきている資金は、ほかのどこでも活用できる資金です。その資金には金利というコストがかかっています。そのコスト以上の利回りで運用されなければロスを出しているに等しいといえます。あるいは、インフレ上昇率以上の利回りが得られなければ目減りします。株式、債券市場の発行体も投資家もすべて自分が取ったリスクのリターンを欲しています。
 この、なんとかペイさせたい、儲けたいという究極の目的は同じでも、人によって好むリスクの種類や取り方がさまざまなために、相場が成り立っているといえます。そしてそのリスクとリターンは、バランスシートのようなもののうえで、常に見合っていると考えます。したがって、リスクのない夢のような儲け話などは存在しないのです。
 たとえば割引国債(ゼロクーポン)を単純に見ると、一見、夢のような話でしょう。50で買ったものが、償還時には確実に100になるのです。しかし、割引国債の購入者はインフレリスクをもろに背負い、ほかの投資物件への機会利益を放棄しています。国債といえどクレジット(信用)リスクもゼロではありません。すなわち、将来何が起こるかわからないという時間のリスクを取っているのです。夢のような儲け話とは50で買ったものが、その瞬間に100で売れることです。そこには価格変動のリスクはありませんが、しばしば犯罪につながるリスクが存在します。


【『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新〈やぐち・あらた〉(パンローリング、2001年)】


実践 生き残りのディーリング (現代の錬金術師シリーズ)