古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

科学的常識の危うさ

 こんな言い方をすると、「まだ遺伝子に祈りがどういう影響を与えるかはよくわかっていないはずだ」という意見が出てくると思います。科学に全幅の信頼を寄せている人は特にそうです。
「科学的にきちんと説明してほしい」、こう言うに違いありません。
 しかし、この言い方は一知半解(いっちはんかい)な人間に特有の不遜さが感じられます。「そんなことあるはずがない」と言うとき、その判断の根拠になっている自分の科学的常識の危うさには気づいていないのです。


【『人は何のために「祈る」のか 生命の遺伝子はその声を聴いている』村上和雄、棚次正和〈たなつぐ・まさかず〉(祥伝社、2008年)】


人は何のために「祈る」のか 人は何のために「祈る」のか 生命の遺伝子はその声を聴いている (祥伝社黄金文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)

権力は性を管理しようとする

 権力はかならず性を管理しようとするものだが、西洋において性衝動を型にはめようとした強権力のひとつがキリスト教であった。キリスト教は、情熱に悪しき性質のあることを教えるのにおさおさ怠ることがなく、原罪という概念を人に植えつけた。神学は男の仕事であった関係から、原罪は女がもっているものとされてきた。イエスは信仰篤い売春婦にやさしみをかけたという伝聞がある。しかし、「だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである」という言葉を吐いたことのほうで、イエスはよく記憶されている。


【『エロスと精気(エネルギー) 性愛術指南』ジェイムズ・M・パウエル/浅野敏夫訳(法政大学出版局、1994年)】


エロスと精気(エネルギー)―性愛術指南