古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

フィリップ・クローデル、ヴィカス・スワラップ


 1冊挫折、1冊読了。


 挫折28『灰色の魂』フィリップ・クローデル高橋啓訳(みすず書房、2004年)/体力不足のため後回しにする。これは必ず読む予定。


 59冊目『ぼくと1ルピーの神様』ヴィカス・スワラップ/子安亜弥〈こやす・あや〉訳(ランダムハウス講談社、2006年/ランダムハウス講談社文庫、2009年)/「どうせ出来過ぎた話なんだろ?」と思いながら読んだ。確かにその通りだった。それでも滅法面白かった。最後のシーンなど泣かずにはいられなかった。孤児の少年ラムがテレビのクイズ番組で全問正解し大金を獲得する。これを支払うことができない番組制作会社が警察と共謀して、ラムが不正を犯したことにしようと企む。警察にしょっ引かれ、拷問されるラムのもとへ一人の女性弁護士が駆けつける。まともな教育も受けず、スラム街に住む少年がなぜ難しいクイズの全てに答えることができたのか? 物語は少年の過酷な人生を描き始める。ラストで二つひねりを入れて、完璧な着地を決めた鉄棒さながらの作品だ。童話のようでありながらも、深い人生哲学が語られている。文句なしの傑作。