古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

将来は過去の繰り返しにすぎない/『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー

 ・テクニカル分析は結果主義
 ・将来は過去の繰り返しにすぎない
 ・ダウ理論

『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
『週末投資家のためのカバード・コール』KAPPA


 相場本の面白さは、マーケットの論理が人生の本質を浮かび上がらせるところにある。人生は割り切れないものであるが、相場は秒単位で1円の誤差もなく割り切られてしまう。評価損、追証……(笑)。


 まあ、この一文を読んでごらんなさいよ。見事な哲学である――

 過去において役に立ってきたことから、将来においても役に立つものと思われる。なぜなら、チャート・パターンは人間心理の研究に基づくものである。人間心理は変らないからである。“歴史は繰り返す”というこの最後の前提を言いかえれば、将来を理解する鍵は過去を研究することにある。すなわち、将来は過去の繰り返しにすぎないということである。


【『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー/日本興業銀行国際資金部訳(金融財政事情研究会、1990年)】


 人間心理は変わらない。成長と堕落を繰り返しながらも、基準線はフラットなのだ。あな恐ろしや。ドイツの宰相ビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言った。賢者とは“変わらぬ人間心理”を読み解くことができる人物だ。


 敢えて断言しているところに、ジョン・J・マーフィーの達観が窺える。


帝国主義大国を目指すロシア/『暴走する国家 恐慌化する世界 迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』副島隆彦、佐藤優


広井良典


 1冊読了。


 37冊目『ケアを問いなおす 「深層の時間」と高齢化社会広井良典ちくま新書、1997年)/介護保険の導入が2000年なので、それに合わせて発行したものと思われる。このタイミングで広井良典という人物を得たことは、介護関係者にとっては僥倖(ぎょうこう)と言ってよい。発行された時に読んでおきゃよかった。それでも半分以上は、10年というタイムラグに耐えるだけの内容。本書の思索は『死生観を問いなおす』(ちくま新書、2001年)で更なる飛翔を遂げる。

『群衆 モンスターの誕生』今村仁司(ちくま新書、1996年)



群衆―モンスターの誕生 (ちくま新書)

 群衆とは何か。近代資本主義の誕生とともに、歴史と社会の表舞台に主役として登場してきた群衆。20世紀のナチズムもスターリニズムも群衆社会がつくりだした全体主義の脅威であったことは記憶にあたらしい。一体われわれは、激流のような群衆化傾向に対して抵抗できるのだろうか。ポー、ボードレールニーチェ、メアリー・シェリーらの群衆への驚き、カネッティやモスコヴィッシの群衆分析、トクヴィルの民主主義論、ルボン、タルドフロイトらの心理学的考察など、さまざまな視点からその怪物的性格を明らかにし、現代人の存在のあり方を根源から鋭く問う群衆社会批判。