権力はかならず性を管理しようとするものだが、西洋において性衝動を型にはめようとした強権力のひとつがキリスト教であった。キリスト教は、情熱に悪しき性質のあることを教えるのにおさおさ怠ることがなく、原罪という概念を人に植えつけた。神学は男の仕事であった関係から、原罪は女がもっているものとされてきた。イエスは信仰篤い売春婦にやさしみをかけたという伝聞がある。しかし、「だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである」という言葉を吐いたことのほうで、イエスはよく記憶されている。
【『エロスと精気(エネルギー) 性愛術指南』ジェイムズ・M・パウエル/浅野敏夫訳(法政大学出版局、1994年)】