詩とは「書くまい」とする衝動であり、詩の言葉は、沈黙を語るための言葉、沈黙するための言葉である――。敗戦後、8年におよぶ苛酷な労働と飢餓のソ連徒刑体験は、被害者意識や告発をも超克した「沈黙の詩学」をもたらし、失語の一歩手前で踏みとどまろうとする意志は、思索的で静謐な詩の世界に強度を与えた。この単独者の稀有なる魂の軌跡を、詩、批評、ノートの三部構成でたどる。
1冊挫折、1冊読了。
挫折11『つながる脳』藤井直敬〈ふじい・なおたか〉(NTT出版、2009年)/毎日出版文化賞受賞作品。誠実さが強過ぎて、まだるっこくなってしまっている。文章の話だ。「僕」という一人称も鼻につく。不思議なほどわかりにくい文章である。40ページほどで挫ける。
17冊目『言語表現法講義』加藤典洋(岩波書店、1996年)/これは勉強になった。明治学院大学国際学部での講義を編集し直したものだが、いやはや凄い。テクニカルな視点で表現の豊かさを追求している。加藤の比喩が絶妙。言われなければ気づかないことが満載。ブロガーは必読のこと。数多くのテキストが引用されており、読書案内としても秀逸。傑出したプレゼンテーション能力にたじろぐがいい。
5年前に植物状態と診断された男性が、質問に対する脳の反応によって「イエス」や「ノー」などの意思疎通ができるとする研究結果が、3日の医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された。
この男性は現在29歳で、2003年に交通事故で脳に深刻な外傷を負った。身体的な反応はなく、植物状態と診断されていた。
英ケンブリッジ(Cambridge)にあるウルフソン脳イメージングセンター(Wolfson Brain Imaging Centre)のエードリアン・オーウェン(Adrian Owen)博士率いる英・ベルギーの研究チームは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使い、男性に「イエス」「ノー」で答えられる質問をしたときの脳の動きを撮影した。その結果、男性の脳が正しく反応していることが確認できたという。
この技術は、健常者に対しては100%正確に脳の反応を復号化することができるが、話したり動いたりできない植物状態の患者に対して試されたのは今回が初めて。過去3年で植物状態の患者23人に対して実験を行い、4人から反応が確認されたが、「イエス」「ノー」のコミュニケーションができたのはこの男性1人だけだった。
ベルギー側の代表、リエージュ大学(University of Liege)のスティーブン・ローレイズ(Steven Laureys)博士は、「この技術はまだ始まったばかりだが、将来的には患者が感情や思考を表現することで、自ら環境をコントロールして生活の質を高められるようにしたい」と抱負を語っている。