フェルディナンド・プロッツマン、ジャック・D・シュワッガー


 2冊読了。


 122冊目『地球のハローワーク』フェルディナンド・プロッツマン/関利枝子、伯耆友子、岡田凛、小林洋子訳(日経ナショナルジオグラフィック社、2009年)/「働く」ことをテーマにした写真集。いずれも、『ナショナル ジオグラフィック』誌に掲載されたもので、100年以上前の作品もある。日本の写真も2枚ある。300ページ以上の写真集で1900円に抑えたのは立派だ。ただし、文章が足を引っ張っている。長めのキャプションをつけるべきだった。働く姿は世界各国で千差万別の表情を現わす。搾取される人々の諸相を切り取った写真集といえよう。


 123冊目『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣ジャック・D・シュワッガー/横山直樹監訳(パンローリング、2001年)/読むのは二度目。多分、あと10回くらいは読むことだろう。投資家にとっては、教師ともいうべき一冊だ。シュワッガーの鋭い質問が、十数人のトップトレーダーの実像を巧みに引き出している。

『富士宗学要集』堀日亨編



富士宗学要集 第1-2巻 富士宗学要集 第3巻 宗義部 富士宗学要集 第4巻 疏釈部 富士宗学要集 第5巻 宗史部 富士宗学要集 第6巻 問答部 富士宗学要集 第7巻 問答部 富士宗学要集 第8巻 史料類聚 富士宗学要集 第9巻 史料類聚 富士宗学要集 第10巻 疏釈部 富士宗学要集 第11巻 総索引

異なる信念が理解し合う瞬間/『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー

 もう三度か四度読んでいる。それでも、「こんなに面白かったのか!」というほど堪能した。スペンサーの機知とユーモア、皮肉と諧謔(かいぎゃく)はシリーズ中ぴか一と思われる。


 護衛を依頼してきたレイチェル・ウォレスは著名なフェミニストだった。対するスペンサーは騎士道精神を体現したマチズモである。これだけで既に何かが起こりそうな予感がする。ただし、レイチェルは女性の権利を守ろうとして常に社会と対立する位置に身を置いているが、スペンサーは自分の信念に照らして行動している。つまり、レイチェルはフェミニストという立場に生きていたが、スペンサーは常に自分自身であろうと努めた。それ以外はあまりにもよく似た二人だ。

「で、きみはいつも自分の好きなことをする」
「ほとんどの場合。できないことも時にはある」


【『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー/菊池光〈きくち・みつ〉訳(ハヤカワ・ノヴェルズ、1981年/ハヤカワ文庫、1988年)以下同】

「おまえたち、だと?」私が言った。「おれたち? おれは、おれとおまえのことについて話してるんだ。おれたちやおまえたちについて話そうとしているんじゃない」


 スペンサーは自分に依って立っている。自分自身だけに帰属している。組織とは無縁だ。彼は、「寄らば大樹の陰」という生き方を嘲笑する存在だ。

「彼女(※スーザン)は連れ歩くような人間じゃない。同席を承知してくれたら、あんたにとっては幸運だ」
「今の口調は気にいらないな」レイチェル・ウォレスが言った。「そのレイディ・フレンドのために、わたしたちが給料を払ってる仕事からあなたの注意がそれというのは、わたしとしては当然の関心事だわ。危険が生じたら、まず彼女を守るの、それともわたしを守るの?」
「彼女だ」


 価値観とは優先順位を明らかにするものである。仕事は人生の一部に過ぎない。それが単なる労働であれば順位は更に低くなる。

「なぜボクシングをやめたの?」
「能力の限界に達したんだ」
「優秀なボクサーじゃなかったの?」
「優秀だった。偉大ではなかった。優秀では生きていけない。充実した人生を送れるのは偉大な連中だけだ。それに、あまりきれいな世界じゃない」


 客観的な自己評価が、自分にできることとできないことを判断する基準となる。スペンサーは大言壮語とは無縁だ。どこまでも、ありのままの自分に忠実であろうとしている。


 異なる信念を持つ二人の人生が交錯し、互いの主張を受け容れることもなかったが、スペンサーがレイチェルを救出したことで二人は深く理解し合う。レイチェルを救い出したスペンサーは声を上げて泣く。その夜、レイチェルは自分の弱さをさらし出す。互いを人間として見つめることができた瞬間に二人の心はつながった。


レイチェル・ウォレスを捜せ (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

機械には時間がない

 機械には時間がない。原理的にはどの部分からでも作ることができ、完成した後からでも部品を抜き取ったり、交換することができる。そこには二度とやり直すことのできない一回性というものがない。機械の内部には、折りたたまれて開くことのできない時間というものがない。
 生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。生命とはどのようなものかと問われれば、そう答えることができる。


【『生物と無生物のあいだ福岡伸一講談社現代新書、2007年)】


生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)