古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

この世界全体がまじめだろうか

 サイムは彼が持っていたステッキで道路の敷石(しきいし)を力いっぱいたたいて、
「まじめって何のことなんだ」と叫んだ。「この街がまじめだろうか。あの支那風の提灯がまじめだろうか。この世界全体がまじめだろうか。ここにきてああだこうだとしゃべくって、たまにはほんとうのことをいうのもいいが、こういうおしゃべりのほかに、何かもっとまじめなもの、それは宗教でも、酒でもかまわない。何かそういうものを自分の奥底に持っていない人間は、僕は軽蔑するんだ」


【『木曜の男』G・K・チェスタトン吉田健一訳(創元推理文庫、1960年)】


木曜の男 (創元推理文庫 101-6) 木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
(※左が旧訳、右が新訳)

ミネルヴァのフクロウは黄昏に飛び立つ

 ミネルヴァ(ギリシア神話のアテナ。知と武勇の女神)のフクロウは黄昏(たそがれ)に飛び立つ、といいます。ゲーデル不完全性定理という“フクロウ(知)”も、歴史の暮れ方に飛び立ち、一つの時代がいわんとしていえなかったその時代の真の“精神”を告知したのでした。


【『ゲーデル不完全性定理 “理性の限界”の発見』吉永良正講談社ブルーバックス、1992年)】


ゲーデル・不完全性定理―

鑑真が来日した日


 今日は鑑真仏舎利を携え薩摩坊津に来日した日(754年)。奈良時代帰化僧で、日本における律宗の開祖。10年の歳月を経て6度目の渡航で、宿願の訪日を果たした。戒律の他、彫刻や薬草の造詣も深く、日本にこれらの知識も伝えた。また悲田院を作り貧民救済にも積極的に取り組んだ。


天平の甍 (新潮文庫) 鑑真 (岩波新書) 鑑真 (人物叢書)