古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

この世界全体がまじめだろうか

 サイムは彼が持っていたステッキで道路の敷石(しきいし)を力いっぱいたたいて、
「まじめって何のことなんだ」と叫んだ。「この街がまじめだろうか。あの支那風の提灯がまじめだろうか。この世界全体がまじめだろうか。ここにきてああだこうだとしゃべくって、たまにはほんとうのことをいうのもいいが、こういうおしゃべりのほかに、何かもっとまじめなもの、それは宗教でも、酒でもかまわない。何かそういうものを自分の奥底に持っていない人間は、僕は軽蔑するんだ」


【『木曜の男』G・K・チェスタトン吉田健一訳(創元推理文庫、1960年)】


木曜の男 (創元推理文庫 101-6) 木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
(※左が旧訳、右が新訳)