古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ジョン・F・カーター、湯本香樹実


 1冊挫折、1冊読了。


 挫折6『フルタイムトレーダー 完全マニュアル』ジョン・F・カーター/長尾慎太郎監修、山下恵美子訳(パンローリング、2007年)/3部21章からなるが、読んだのは第1部のみ。それ以降は具体的過ぎてダメ。米国の銘柄である上、チャートやソフトも直ぐ入手できるかどうかがわからない。第1部の内容がよかっただけに残念極まりない。この値段であれば、アレキサンダー・エルダー著『投資苑 心理・戦略・資金管理』の方がオススメ。


 20冊目『夏の庭 The Friends湯本香樹実徳間書店、2001年)/広井良典著『死生観を問いなおす』(ちくま新書)で紹介されていた一冊。死に興味を抱いた小学生3人が、独り暮らしの老人が死ぬ瞬間を見ようと観察を開始。いつしか老人との交流が始まる。科白が上手い。細かい描写もしっかりしている。時々秀逸な文章が立ち現れる。予想以上に面白かった。見返しには、寺山修司に師事したと書かれている。更に本書は、10ヶ国以上での翻訳が決まり、世界中の児童文学賞を総なめにしているのこと。「死」という重いテーマであるにもかかわらず、実に爽やかな読後感を残してくれる。

資産運用のリスクを恐れるな/『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新

 ・資産運用のリスクを恐れるな

『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦


 為替ディーラーの教科書と謳われた本。名文は明晰な哲学から生れるというお手本でもある。100章で構成されており、各章は3〜4ページである。マーケットという現場で培われた知恵が随所に光る。

 私たちは自分の人生の当事者です。私たちの預貯金や保険はまさかの時の備えに必要なものですし、積み立てている年金は老後の私たちの生計をたてるのに必要です。ほかのだれのものでもありません。
 何をしていてもリスクはあるのです。資産運用のリスクが怖いからと、当事者であるリスクを避けることは、傍観者であるリスクを受け入れることです。同じ自動車に乗っていながら、運転席よりも助手席の方が安全と思うようなものです。
 しかも資産運用の世界では、事故歴がたくさんあるドライバーでも、有名ならば他人の車を運転していますし、当のドライバー自身がその車に乗っていないことも多いのです。
 自分のリスクは自分で取りましょう。リスクとは避けるものではなく、うまく管理するものなのです。


【『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』矢口新〈やぐち・あらた〉(パンローリング、2001年)】


 要は資産運用を他人の手に預けるのか(預金、保険)、自分でヘッジするのかということ。「卵は一つのカゴに盛るな」という相場格言を踏まえれば、預金と資産運用のバランスも大切になってくる。ま、素人がニコニコ顔で相場に足を踏み入れれば、ケツの毛まで抜かれることは確実。


 ファイナンシャル・リテラシーは学んでおいた方がよい。それが結果的に我が身を守ることになる。経済に対する見方がガラリと変わり、世の中の仕組みがわかるようになってくる。


ドル基軸通貨体制とは/『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓