古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

目的地が特定されていない移動は、それだけで既によろこびなのだ

 で、ここのところ毎日、どこに行くということもなく、西に東に、ただただ闇雲(やみくも)に自転車を走らせている。
 なぜ走るのかって?
 単純に言って、楽しいからだ。
 目的地が特定されていない場合、移動は、それだけで既によろこびなのだ。このことは、結婚を前提としていない恋愛が明白で、目的のない人生が洒脱であることとどこか通じている……だなんて、無責任な法螺(ほら)を吹くのはやめましょう。私の人生には、目的なんてありゃしないが、それは、あんまり自慢できたことじゃないのだから。


【『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆徳間書店、1994年)】