古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

休暇をとるには殺した相手の耳を持ち帰らなければならないことになっていた

 中にはそういうことが好きな奴もいた。たとえば、ミッチェルという男がそうだ。彼は大男で、6フィート以上もあった。彼は第一師団で優秀な兵士として知られていた。決して口答えしなかったし、言われたことは何でもやった。彼の主たる任務は、広域パトロールだった。それは特別な訓練を受けた兵隊で構成される特別な仕事だった。彼らはヘリコプターで運ばれてある地域に降下させられるが、ひとりひとりがある種の任務を持っていた。彼らは捕虜をつかまえ、それを連行することになっていた。すると彼らは無線でヘリコプターを呼ぶのだ。そしてヘリが、連中をひろい上げる。ところでこのミッチェルという男は完全にその仕事に打ち込んでいた。彼はつねに斧を携帯していたが、刃をまるで剃刀のように研いでいた。そして彼は薮の中にひそんでいる相手にそっとしのび寄ると、生きたまま連行するかわりに、その首を切り落とす。そして、その首を袋につめて持ち帰るのだった。第一師団では、一定数の敵を殺した者には3日の休暇が与えられたが、それには殺した相手の耳を持ち帰らなければならないことになっていた。ミッチェルは首を持ってくるのだった。とにかくそうやって休暇が与えられると、あまり戦闘の行なわれない場所に送られる。たまたま臼砲の攻撃ぐらいしかない海岸のようなところだが、そこには娯楽施設があった。ミッチェルはしょっちゅう勲章を与えられていた。(ジミー・ロバーソン)


【『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン/鈴木主税〈すずき・ちから〉訳(合同出版、1971年)】


人間の崩壊 ベトナム米兵の証言