東京電力の清水正孝社長は22日、福島第1原発事故で周辺住民が避難している福島県内の避難所を訪問した。事故から約1カ月半。ようやく謝罪に現れた社長に、住民は怒りをあらわにした。
清水社長は午後1時半ごろ、約1500人が避難する郡山市のビッグパレットふくしまに、青の防災服姿で現れた。2時間近くにわたり、時には土下座しながら住民にわびて回った。
富岡町の主婦遠藤恵子さん(55)は「きれいな富岡の町を返してください。もう帰りたいんです」と涙を流しながら清水社長に詰め寄った。夫(55)と2人の避難所暮らしは1カ月以上。持病も悪化し、先行きの見えない生活に死を考えたこともあるという。
避難先で前日、母親(95)が亡くなったという横田一也さん(63)は「避難先で知人8人を亡くした。東電は殺人者だ。もう流す涙もない」と怒りをぶちまけた。
「どんな思いで生活しているか、ここで寝起きしてみて」。富岡町の農業佐藤ふじ子さん(58)も声を荒らげた。一時帰宅した際、飼っていた牛8頭のうち4頭は死に、子牛を身ごもっていた母牛の姿はなかった。「謝罪はうわべだけ。生活をどうしてくれるのか」と吐き捨てるように言った。
一方、避難者の中には「頑張ってください」「体に気をつけて」と励ます人もいた。
清水社長は謝罪を終え、「心身ともにご苦労されている様子が身にしみた。今まで築き上げた地域との信頼関係が崩れたと痛感した」と語った。その後、夜には同原発がある双葉町の住民約1400人が集団避難生活を送る埼玉県立旧騎西高校(同県加須市)を訪問。井戸川克隆町長に「一日も早く皆さまが故郷で生活できるよう全力を尽くしたい」と謝罪したが、同校での滞在時間は7分程度で、町民には会わなかった。