古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

電力のシャブ漬けとテレビの洗脳CM

 そもそも原発は、電力よりも世論操作のために生まれた。戦後、順調だったGHQの日本懐柔策は、1954年の水爆実験の日本漁船乗組員被曝で迷走。世論は反米へ傾き、左翼の扇動もあって収拾がつかなくなる。前53年に正力松太郎日本テレビを作らせた柴田秀利は、「毒をもって毒を制す」といって日米両政府に働きかけ、「原子力の平和利用」として原子力発電所の建設をめざし、平和運動原子力推進派と反対派に分断。


 つまり、原発は、米ソ冷戦下において、その最前線に位置する日本の産業と生活のエネルギーが、米国から独占的に供給されるウランに依存し、米国側ブロックから離脱できないようにする踏み絵だった。実際、我々はその恩恵を享受し、隣接する東側の国々に、豊かなエネルギーに基づく贅沢三昧を見せつけてきた。繁栄する日本は、米国側ブロックに属することのメリットを世界に示す宣伝ショールームだった。そのために、CMはもちろん、ホームドラマから、アニメやクイズショーまで、テレビは次々と最新の電器製品を出してきて、それらを買い揃えることこそが幸せだ、と我々に信じ込ませた。


純丘曜彰