東京電力福島第1原発の事故で政府の初動対応が遅れた背景として、与野党内から、経済産業省と東電との「もたれ合いの関係」を指摘する声が上がっている。大物OBが再就職しているため、安全面での指導が甘くなったとの見方だ。国会で取り上げられそうだ。
東電は、旧通産省時代から同省OBの再就職を受け入れており、副社長を務めた元幹部もいる。今年1月1日には、昨年8月まで資源エネルギー庁長官として同社の監督に当たった石田徹氏が顧問に就任。野党は、自公政権時代よりも短期間で関係先に再就職したとして、「究極の天下り」と批判したが、菅政権は、経産省があっせんしたわけではなく「天下りには当たらない」と反論していた。
こうした経緯を踏まえ、自民党幹部は「OBがいる東電は身内。厳しい監視、指導ができるわけない」と断じ、社民党の福島瑞穂党首は「どんなに危険と指摘しても聞く耳を持たなかった」と同省と東電を批判した。
枝野幸男官房長官は28日の記者会見で、菅直人首相が震災発生翌日の12日早朝に原発を視察した理由を問われ「東電からも経済産業省原子力・安全保安院からも、なかなか現地の情報が入ってこなかった」と情報不足を挙げた。しかし、天下り根絶を掲げる民主党内からは、菅政権が石田氏の再就職を認めたことを念頭に「政権が代わっても、官民癒着は続いている」(中堅)、「東電と役所の癒着、天下りが、政府対応が後手に回った一因だ」と冷ややかな声が漏れた。
つまり政府と経済産業省と東電の利益は、国民の不利益に他ならない。