23年間「昏睡(こんすい)状態」と診断されていたベルギーの男性が、実際は意識があったことが新たな検査方法で分かった。
ロム・ハウベン(Rom Houben)さん(46)は1983年に交通事故にあって以来、植物状態にあると考えられていたが、実際は意識があり、麻痺(まひ)状態でコミュニケーションがとれないだけだったことが分かった。
ハウベンさんの本当の状態は3年前に明らかになった。リエージュ大学(University of Liege)の研究チームが行った新たな検査で、脳が機能していることが判明したのだ。
ハウベンさんの状態は「閉じ込め症候群」と呼ばれるもので、同チームによると、意識があるのに昏睡状態と誤診されたケースは非常に多いという。「閉じ込め症候群」のレベルはさまざまだが、ある患者グループでは昏睡状態と誤って診断されていた人が40%を超えていたという。
「叫びたかったけれど、声が出なかった」
技術系の学生で武術に夢中だったハウベンさん。現在は特殊なコンピューターを使ってメッセージをタイプすることができる。
独週刊誌シュピーゲル(Spiegel)に対し、長い間いろいろなことに思いを巡らして過ごしていたと語った。「叫びたかったけれど、声が出なかった」「ようやく間違いが発見された日のことを絶対に忘れない。2度目の人生が始まったんだ」
標準的な診断基準を
新たな検査方法は主に脳の働きを観察するもので、患者が痛みや話しかけに反応することを見極めることができる。
通常の手法で植物状態と診断された患者44人のうち、18人が何らかの意識があり、うち4人は最終的に昏睡状態から目覚めたという。
研究チームによると、昏睡状態とは異なる「最小意識状態(minimally conscious state)」という概念は、2002年まで医学界で知られていなかった。
チームはまた、医学の進歩にもかかわらず診断手順がまだ定まっていないために、近年になっても誤診が大幅に減少してはいないと結論づけ、ハウベンさんのようなケースを避けるために、「植物状態」と断定する前に少なくとも10回は検査をすべきだと指摘している。