古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

創造的な天才は世界に隠された秩序を把握する

 そうった信念を、ポール・ディラックアインシュタインについて語るときに述べている。すなわち「理論に美をもちこむことは、実験に合致させることよりも重要である」。タヒチに足を踏み入れるより前に理想化されたエヴァを描いていたゴーギャンと同じように、パリのサロンから高貴なる野蛮人を夢想したルソーと同じように、ダーウィンは自然を事前に予知したのだ。
 創造的な天才とは、その本性から「これから発見されるべき事柄、新たな実験、未知の結果を嗅ぎ分ける」ことができるよう、そっと知らせてもらえるような人々のことであると、ディドロは書いている。彼らは目で見た以上のことを想像するが、それによって、想像の世界をつくりだすというよりもむしろ実在の世界に隠された秩序を把握するのだ。


【『内なる目 意識の進化論』ニコラス・ハンフリー/垂水雄二〈たるみ・ゆうじ〉訳(紀伊國屋書店、1993年)】